いて座
星がきれいだな
不自然さを宙づりに
いて座から数えて「生の実感」を意味する5番目のおひつじ座に「勢いと拡張」の木星がめぐってきた2022年下半期は、いて座にとって「舞台を俯瞰していく」時期なのだと言えます。
人は誰しもが「自分をヒロイン/ヒーローとする美しい物語」を作っており、物語の展開に応じて、過去の記憶は無意識のうちに書き換えられていくもの。しかしその実、生は決して架空の“お芝居”などではありません。
「美しい物語」をいくら積み上げたとしても、人は孤独を癒すことはできませんし、むしろ次第に美しく演じることの空虚さが積み重なっていくだけでしょう。ただそれでも、私たちが単なる事実そのものに飽き足らず、何らかの脚色された物語を生きようとする限り、生は虚構化を免れないのであり、それゆえ何かしらの形で「奇妙な芝居」はこれまでもこれからも上映され続けていくのです。
ただし、今期のいて座に関しては、自分もまたいつの間にか演技に参加していた“お芝居”がひと段落して、幕間(まくあい)を迎えていくイメージに近いでしょう。そこで自分がこれまで立たされてきた舞台を改めて俯瞰し、わざとらしい演技や掛け合い、仰々しい演劇的効果などを宙づりにし、「不自然さ」を浮き彫りにしていく。そうすることで、少しでも演じづらさ、すなわち生きづらさを軽減し、逆説的に「生の実感」を取り戻していくこと。それこそが2022年下半期のいて座のテーマであり、そこでは「前向きな諦観」を備えた本物の知性やユーモアが必要とされていくでしょう。
2022年下半期:いて座の各月の運勢
7月「そこに“エモさ”はあるか?」
7月10日に前後して、いて座の守護星で「ノリ」の木星と、「批判精神」の水星が鋭くぶつかり合っていきます(90度)。
この配置は、一通りボケ倒したあとに、思いっきりツッコミが入るという漫才の場面を思い浮かべるといいでしょう。水星はかに座にありますから、そのツッコミは主に「それじゃあ誰も共感できない」といった人間的情緒の立場からのものなはず。
気付かないうちに自分の主張や考えに色っぽさや生々しさが失われ、人工知能のようになっていなかったか、改めて振り返ってみるといいかも知れません。
8月「いのちを吹き込む」
8月1日頃には、いて座の守護星で「ビジョン」を司る木星に、「創造的な意志」の太陽が共感しつつ結びついていきます(120度)。
この時期は自分が置かれた状況を大きな視点から眺めるだけでなく、実際に創作などに手を染めてみたくなるでしょう。そしてそれは人生舞台のディテールに作りこむというより、一番核心的な「いのち」を鼓動させるべく、おのれの「息」を吹き込んでいく、といったイメージに近いはず。
これがなければ、これができなければ、自分の人生じゃないと思えるようなものとは何か、改めて自問自答してみるべし。
9月「言葉が熱を帯びる」
9月2日に前後して、いて座の守護星で「運動感覚」の木星と、「攻撃性」の火星が小気味良く感応しつつ(60度)、「知識や情報」の水星と向き合っていきます。
この配置は、ああでもないこうでもないと喧々諤々と議論しながら、図書館の司書が新たに増やす蔵書のリストを作っていくようなイメージです。それらの作業は留まることなく行われ、また、単に内部で話し合われるだけでなく、外部へと積極的に発信されていくでしょう。
そうして、自身の抱いた思いについて語るための言葉が溢れ出し、それらはやがて実際のアクションや計画となって走り始めていくはず。
10月「看板猫の働き」
10月2日に前後して、いて座の守護星で「公共的なところ」を司る木星が、「美意識」の金星と真っ向から向き合っていきます(180度)。
この組み合わせは、お店に鎮座している看板猫に置き換えることができます。この猫はあなたの美意識や感受性を象徴していて、人懐っこくお客さんの膝に飛び乗るにしろ、店の一角にデーンと構えているにしろ、単なる通りすがりも含めて多くの人びとをあなたの元へ惹きつけていくはず。そして、そうして生まれる縁や交流はあなたに少なからず新たな気付きをもたらしてくれるでしょう。
11月「応答していくべき声」
10月28日にいったん木星はうお座に戻り、今月から12月20日に再びおひつじ座に戻るまでのあいだ、改めて2022年下半期の全体運で述べた「不自然さを浮き彫りにする」というテーマをきちんとまっとうするべく、そもそも自分は何者でありたいのか、そしてどんな共同体と結びついていきたいのか、改めて俯瞰していくことがテーマとなっていくでしょう。
そして、そこで鍵になってくるのが、自分なりの「責任」ということ。とはいえ、それはいざとなったら自分が泥をかぶる義務(duty)を負うといった話ではなくて、自分が応答していくべき声というのはどんなものかという「responsibility(応答性)」の話であり、どんなことに自分は恩義を感じているのかが焦点となっていくはずです。
12月「舞台監督のまなざし」
12月6日頃にいて座の守護星で「善意」を司る木星が、「自覚」を司る水星とふたたび鋭くぶつかり合っていきます(270度)。
これは前月から引き続き、いわば「ノブレス・オブリージュ(高貴なるものに伴う義務)」にも関係してくる配置であり、自分の体験から得られた教訓や戒めを貯えつつも、手元に残すものは必要最低限にとどめ、かつて幸いにも受け取った善意が、他の誰かの元にも届いていくように、あなたはここでいかに善意を分配していかねばならないかという信念を新たにしていこうとするでしょう。
それは自分なりのリーダーシップに対する自覚であると同時に、全体運の文脈と結びつければ、舞台を俯瞰する舞台監督としてのまなざしにも通じていくのだと思います。
2022年下半期:いて座の「お守りにしたい言葉」
わたしという個体がこの多言語世界で吸収してきた音の集積である。ここでなまりや癖をなくそうとすることには意味がない。むしろ、現代では、一人の人間というのは、複数の言語がお互いに変形を強いながら共存している場所であり、その共存と歪みそのものを無くそうとすることには意味がない。むしろ、なまりそのものの結果を追求していくことが文学創造にとって意味を持ち始めるかもしれない。(多和田葉子『エクソフォニー』)
ドイツに移住し長年にわたりドイツ語と日本語の両方で書かれた小説や詩を発表し続けてきた多和田葉子は、自分が関わっている複数の環境を介して、ごく自然なかたちで道徳的・知的・霊的な生の全体性を受けとり、表現していく上で大切なことについて、こう述べていました。
著書名である「エクソフォニー」とは「母語の外に出た状態」をさす言葉であり、彼女もやはりここで母語と異国語の不自然なもつれあいをきちんと浮き彫りにしているのだと言えます。
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