てんびん座
HEN
不意に海に出てしまう
てんびん座から数えて「完成と破綻」を意味する7番目のおひつじ座に「勢いと膨張」の木星がめぐってきた2022年下半期は、てんびん座にとって「レールから外れていく」時期なのだと言えます。
道草や寄り道は旅の醍醐味ですが、同じことが人生において起きた時、しばしば人はひどく慌てふためいたり、自身の今後を悲観してしまったりするものです。しかし、今期のてんびん座は、そうした予定調和の破綻に向けて、あえて突き進んでいくようなところがあるでしょう。
例えば、小型の舟に乗った状態で外洋に流されてしまった、という状況を考えてみてください。川の急流や難所を乗り越えたことが幾度かあった人でさえ、さすがに呆然とするのではないでしょうか。そこで、「ああ、もう自分は元には戻れないんだな」とか、「この先どこかへたどり着くことはできるのだろうか」と心許なくなる。あるいは、これまで忙しくしてきた人からすれば、ゴロゴロすることしかできない自分を恥ずかしく思うこともあるかも知れません。
とはいえ、人生はどんな小説より長く、たえず歴史をはみ出していくもの。どんなにみずからの能力の使い道やストーリーの落ち着き先を明確にしていこうとしてみたとしても、いや、そうして人生を必然の糸で固めようとすればするほど、人はどこかで偶然の海に翻弄され、これまで築いてきた“必然性”を覆されてしまうはず。てんびん座にとって、2022年下半期というのは、そんな不意に「海に出てしまう」時なんです。
しかし、それは決して不幸などではなく、逆にそうしてはじめて、偶然でいいんだ、何かをたくさん持っている必要はないし、「生まれのたまたまや、出会いのたまたまからこそ、むしろ濃密な意味が立ち上ってくるんだ」という気付きと解放がもたらされていくのではないでしょうか。
2022年下半期:てんびん座の各月の運勢
7月「UFOを追って」
7月13日に前後して、てんびん座の守護星で「楽しみ」の金星が、「節度と管理」の土星と共感的に結びつきつつ(120度)、「ありえないこと」を司る海王星と鋭く対立していきます(90度)。
例えば、有名な住宅メーカーの建売が無数に立ち並んでいるような街に生きていれば、就職して、結婚して、子どもを産んで、家を建てる、といった多くの人が共通して追いかける紋切り型の人生も当たり前のように受け入れてしまうものですが、この配置では、そうやって月並みな形で落ち着くことへの拒絶感が非常に強まるでしょう。
しかし、街のはしっこまで歩いて、その先に出ていくかどうか決めるのは、あるいは、たまたま空に現われたUFOを追っていくかどうかを決めるのは自分です。この時期は、そんなことをどこか頭の隅に置いてみるといいでしょう。
8月「奇妙な結びつきと見慣れぬ景色」
8月2日に前後して、てんびん座の守護星で「交流」を司る金星は、「行動力」の火星と「離脱と反発」の天王星という組み合わせと小気味良く感応し合っていきます(60度)。
この時期は、想定していなかった角度からの思いがけない誘いや、あまり出会ったことのないタイプの相手との交流が生じていきやすいでしょう。そして、あなたはそれに自分でも驚くほど素直に応えてしまうはず。しかし、人生はしばしばそうした「もののはずみ」によって動かされていくものであり、また奇妙で不格好な結びつきほど、のちのち愛着がわいてくるものでもあります。
たとえ見慣れぬ景色が連続したとしても、そうした状況自体を楽しんでいく気持ちを忘れずに過ごしていれば、この時期の出会いはあなたにきっと思いがけない恵みをもたらしてくれるでしょう。
9月「裏世界への壁抜け」
9月1日を前後して、てんびん座の守護星で「受容性」の金星は、「境界線消失」の海王星と「異界」の冥王星へと半ば強制的に惹きつけられていきます。
この配置は、ゲームの世界でいうところの「壁ぬけ」の訓練をしていくのに近いかも知れません。つまり、固い壁や障害物に対したとき、通常ならぶつかるか、そこで引き返す羽目になる訳ですが、“透明モード”になれば壁や障害物の向こう側へとすり抜けていけるのです。
もちろん多くの場合、そうしたケースはゲーム世界に偶然発生したバグによって起きますが、言わばこの時期のあなたは脳内に意図的にそうしたバグを引き起こして、合意的現実の“向こう側”、ある種の「裏世界」を受け入れ、より身近に感じていこうとしていくのだと言えます。
10月「狙いを定める」
10月12日頃にてんびん座を運行している「前進する力」の太陽が、「終わらせる力」の土星と同調して結びついていきます(120度)。
これは物語でいえば主人公が物語の結末や次の展開をそれとなく意識して話を進めていくような場面をイメージするといいでしょう。あるいは、締切や納期を再確認する連絡が入って、物語の書き手が原稿の仕上げに入っていくといった場面でもいいかも知れません。
いずれにせよ、この時期はどこか計画が着々と進行していくような達成感やそれに必要な集中力を発揮していきやすいはず。今自分はどこへ向かいつつあるのか、どこへ向かっていきたいのか。ここで改めて明確にしていくべし。
11月「雨ふる、ゆえにわれ在り」
10月28日にいったん木星はうお座に戻り、今月から12月20日に再びおひつじ座に戻るまでのあいだ、改めて2022年下半期の全体運で述べた「予定調和の破綻」というテーマを突き進めていくべく、この時期はいかに全身から余計な力を抜いて、リラックスしていけるかが大切になっていくでしょう。
そして、そこで鍵になってくるのが、「人間的尺度の相対化」ということ。自己と環境との関係には、ごく個人的なことからそれを超えた人類規模、地球規模のことまで、本来さまざまなレベルがありますが、この時期はできるだけ「われ思う、ゆえにわれ在り」と自分を思考の枠内に閉じ込めたり、自己責任を過剰に抱え込むのではなくて、「雨ふる、ゆえにわれ在り」くらい、物事を捉える尺度を自然の側に寄せてみるといいでしょう。きっとその方が面白いです。
12月「自分の思いを歌にする」
12月1日に前後して、てんびん座の守護星で「感性のきらめき」を司る金星が、「型」の土星と小気味良く協力しあいつつ(60度)、「ターゲット化」の火星と向かい合っていきます(180度)。
この配置は、たとえば自分でつくった短歌や俳句を、プレゼンの場で朗々と詠みあげていくような場面に置き換えられるかも知れません。いずれにせよ、多くの人を惹きつける魅力と、それを裏付けるだけの努力が同時に発揮されていきやすい時期なので、自分の願望や気持ちをはっきりと口に出して伝えていくにはもってこいのタイミングと言えるでしょう。
その際、重要なのは気ままにやりたい放題やるのではなく、いかに「型」すなわち無駄のない形式を取り入れていけるか、ということになるはず。
2022年下半期:てんびん座の「お守りにしたい言葉」
月の光は深い渦巻の底までも射しているようでした。しかしそれでも、そこのあらゆるものを立ちこめている濃い霧のために、なにもはっきりと見分けることができませんでした。その霧の上には、マホメット教徒が現世から永劫の国へゆく唯一の通路だという、あのせまいゆらゆらする橋のような、壮麗な虹がかかっていました。(エドガー・アラン・ポー、佐々木直次郎訳『メールストロムの旋渦』)
この短編小説は、ノルウェー海岸のひとりの漁師が予想外の風に煽られて、船もろともメエルシュトレエムと呼ばれる巨大な渦の中に巻き込まれ、奇跡的に助かった時には一晩で髪が真っ白になってしまったという海難話なのですが、その体験にはどうも“恐怖だけでは割りきれない何か”がありました。
船の高さの数十倍もの大渦に、木の葉のように揉みしだかれ飲み込まれていく船の姿は、まるで深い深い羊水の海の底に潜っていく胎児のようであり、そこには時が歩みを止めてしまったような楽園の平安が温かく漂っていたのかも知れません。
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