いて座
アハッ
「行」に受け入れられていく感覚
今週のいて座は、ひとつの器としての「行」のごとし。あるいは、意識の制御をはずれて自動運動化しているおかしな癖や習慣をすくいとっていこうとするような星回り。
精神科医の塚崎直樹は、普通の人の感覚からすれば理解不能な重症の神経症や境界例、統合失調症などの患者の行動を、「行になりきれなかった行」と見なし、精神症状を「行」に転換できれば症状が消えるのではないか、という提案をしています。
一般的に「行」とは、宗教的な体験を得たり、それを洗練させていくための行為として定義されていますが、これは何らかの「修業」が明確な目標や起源をもっているのに対し、「行」とは根本的に目に見える効果を求めるものではなく、長い時間の中でしみわたるように変化が生じる性格のもので、しかも最初からそうした変化を期待することは失敗につながるような、きわめて曖昧かつ繊細なたぐいの活動であり、塚崎はある宗教者の言葉を借りて、「効果はないが、功徳はある」のが「行」なのだとも述べています。
つまり、塚崎の提案は「行」を特殊なことと考えるのではなく、日ごろなんとなくやっていることの中に、そういう性質のものがないかどうか考えてみようというもので、中途半端に断片化されたまま繰り返され、悪循環に陥っている「行」が完結するよう促していくことで、自分でも気づいていなかった、みずからの言動の意味や価値に気が付いていこうということなのだと思います。
その意味で、10月3日にいて座から数えて「身体性」を意味する2番目のやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が「行」に受け入れられていくという感覚を深めていくことがテーマとなっていくでしょう。
限界状況に立っていくこと
いささか大げさにも感じられますが、この「限界状況」という言葉は、私たちが一生のうちで何度もぶつかっていかなければならぬ「もうこうなっては」とか「いよいよ」といった感覚や気持ちとも深く関係しているように思います。
そもそも私たち人間は、生・老・病・死という4つの苦しみを絶対条件として生存を許されているという点で、生まれながらの限界状況にある訳ですが、そのことでさえ私たちはイライラやウツウツなど一時的な気分や、晴れの日の次に雨の日が巡ってくるような出来事と同じように、いやなものだったり、気の迷いや心の弱さの現われとして、はね返し忘れ去ろうとする傾向にあります。
そうしなければ、日々の業務や生活は円滑に回らないし、意欲が衰えてしまうから。こうしたけなげさは、間違いなく人間のもつ特有の性質である一方で、私たちはいつも思ってもみなかった状況に置かれて初めて思ってもみなかった自分を発見し、自分が機械ではなく人間であるという事実を、突如まざまざと実感するのです。
その意味で今週のいて座もまた、「いよいよ」とか「もうこうなっては」といった限界状況を自分事として受け止め、深めていくことがテーマとなっていきそうです。
いて座の今週のキーワード
「もうこうなっては」を受け流さない