
やぎ座
緊張から脱力へ

気分は鉱泉宿の湯治客
今週のやぎ座は、『寝仲間に我をも入(いれ)よ春山(はるのやま)』(小林一茶)という句のごとし。あるいは、張りつめていた神経や体がそっとやわらいでいくような星回り。
この「春の山」の、まるで羽根布団のようなやわらかな雰囲気は、作者の故郷で厳しさが全面に出る北信濃の山容ではなく、どこか関東の出先のものだろう。
あまり広くもない雑魚寝用の部屋があって、そこには昼間からごろごろしている数人の「寝仲間」がいた。
ぐーすかと寝息を立てているのもいれば、ぼそぼそと話しているのや、本を読んだり手慰みに編み物をしているのもいたかもしれない。障子はあけ放たれていて、その向こうにはのどかな春の景色が広がっている。
さあさ、自分も空いているところにごろりと横たわって、春の陶酔的な気分に浸ってしまおう。それで嫌なことや面倒なことのあれやこれやを、すっかり溶かしてしまえばいい。寝ている気分は春の山。そこで蝶になって野を飛んでいる夢でも見れるかも知れない。
ただし、それには一緒にぼんやりできるような「寝仲間」が必要で、からだがぎりぎり接しない程度のふれあいが鍵となる。その意味で、3月29日にやぎ座から数えて「居場所」を意味する4番目のおひつじ座で新月(日食)を迎えていく今週のあなたもまた、そんな条件がそろうような機会や場所をおのずと求めていくことになるはず。
脱力トレーニング
例えばマッサージ店やリハビリの現場などに目を向ければ、一度力が入ってしまった体の緊張を元に戻すということがいかに難しいことであるかを伺い知ることができますが、なぜ私たちはそんなにも脱力に抗おうとしてしまうのでしょうか。
これは逆に、ものすごく緊張が抜けてしまっている人がどうなってしまうのかを考えてみると分かりやすい話で、腕の重さだけで肩を脱臼してしまうといった軽度な事態から、寝入ったまま2度と起き上がる力を失ってしまう、細胞の張りが綻びて中身がバラバラになっていくといった決定的な事態がある訳で、脱力への抵抗にはこうした2度と元の生へ戻ってこれないことへの恐れが多分に含まれているのかも知れません。
ただし、これも経験的に誰もが知っていることではありますが、それが適度な弛緩やリラックスであれば、私たちは完全に死へと行き切ってしまう代わりに、単に元の生へと戻ってくるだけでなく、以前よりずっと生き生きとした状態へと「回復」していくことができる。その意味で、身体的な緊張癖から認知上の緊張まで、みずからの日常生活にどんな緊張が伏在しているかを再発見していくことは、生きる力そのもののリハビリでもあるのです。
今週のやぎ座もまた、過剰に働かせてしまっている防衛機構としての緊張を改めて見出していくことがテーマとなっていくでしょう。
やぎ座の今週のキーワード
やらわかい雨が地面を濡らすように、死をそこはかとなく自分自身に浸透させていく





