
かに座
真実味にもとづく時刻修正

本当の時間を知ろうとすること
今週のかに座は、『時計屋の時計春の夜どれがほんと』(久保田万太郎)という句のごとし。あるいは、必要以上に根深く自身に浸透してしまったていた怪しげな魔法や偏見から解放されていこうとするような星回り。
時計屋さんの時計が、みんなバラバラの時間を指している。おいおい、どれが本当の時間なんだか、よく分からなくなっちまったよ。そんな軽い冗談のような一句なのですが、「春の夜」からにじみ出てくる、どこかかすみがかった柔らかい浮遊感のようなものが効いて、現実と虚構との境い目がうすれた時の臨場感がなまなましく伝わってくるようです。
2016年に第一次トランプ政権が誕生したことを受けて、オックスフォード辞典が「ワード・オブ・ザ・イヤー」に「ポスト・トゥルース」という言葉を選び、大きな話題を呼びました。これは「世論を形成する際に、客観的な事実よりも、むしろ感情や個人的信条へのアピールの方がより影響力があるような状況」を指しましたが、それからの約10年で「フェイクニュース」や「オルタナティブ・ファクト」という言葉がますます力を持つようになり、今ではもはや、あまりにも多くの嘘が垂れ流されているため、社会全体が嘘に対して不感症になっているように感じます。
掲句にひもづければ、みんなバラバラの時間をさしていても、誰もそれにツッコまないどころか、「本当の時間」を知ろうとも、ズレた時計を修理しようともしなくなってしまったのだとも言い換えられるかもしれません。
3月29日にかに座から数えて「処方箋」を意味する10番目のおひつじ座で新月(日食)を迎えていく今週のあなたは、そうした不感症気味な世の風潮に知らず知らず引っ張られていた自分をリセットしていくような流れが、不意に出てきやすいでしょう。
「まさか」や「もしも」の正体
もしあなたが自らの存在価値と、思い定めている方向性を少しでも信じているのなら、いまは前へ前へと進んでいくことよりも、立ち止まって心のどこかで引っかかっている気がかりや胸のつかえと、きちんと向き合ってみることの方が大事かも知れません。
「まさか」の瞬間はいつやってくるか予想がつきませんし、自分だけは例外だと考えて「もしも」の時への備えを怠る者は、肝心なところで運命にいたずらされ、裁きの俎上にのせられてしまうものです。
この先も心の奥底で暗い不安をずっと膨らませていくくらいなら、いっそここらで思い切って「まさか」や「もしも」の正体を突き止め、不要な不安を消し去っておくのも悪くない選択でしょう。
今週のかに座は、自分の頭や心のなかの考えや感情が、みずから抱いたものなのか、いつの間にか誰かに抱かされていたものなのか、しかと見極めていくつもりで過ごすべし。
かに座の今週のキーワード
シンデレラの鐘の音





