おひつじ座
驚きのなかに立つ
風の二重性
今週のおひつじ座は、『風、風、風、なんにも信じない自分があった』(古家榧夫)という句のごとし。すなわち、畳みかけるような問いが吹き抜けていくような星回り。
途方もない空間的な広がりを否が応でも痛感させられる風の中で、人はしばしば物事への客観視を促されるものですが、掲句で客観視されている他ならぬ自分自身。
最初の畳みかけるような「風」の連なりによって、あらゆる「風」の在りようが想定されていきます。それは時に予期しない旅や冒険への誘いとして頬をなで、またダイナミックな飛行の夢とともに背中をおし、あるいは、あらゆるものの眠りを覚ます呼び声としてびょうびょうと頭蓋にこだまする。
朝方の涼風であれエアコンの送風であれ、風はつねにやさしさと狂暴、清純さと錯乱といった矛盾した性質を同時に備えており、活力的であると同時に破壊的なその二重性によって私たちの固まりがちな精神をゆさぶり、ときに残酷な真実を垣間見せる。
風は興奮し、落胆する。叫び、哀訴する。そしてその結果、「なんにも信じない自分」がポツリと残されていることに不意に気が付いたりするのです。
9月4日におひつじ座から数えて「疑問符」を意味する9番目のいて座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、おおいに精神が揺さぶられるような問いかけに積極的に身をさらしていくべし。
風に敏感になる
平安時代に編まれた勅撰和歌集『古今和歌集』の中に藤原敏行の歌のなかに、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」というものがあります。
これは風の音で秋が来たと知る。目にはよく分からないけれど、季節の推移に何か異変を感得した、まさにその瞬間を捉えている訳ですが、冒頭の句の場合は、またそれとも感得の仕方が違っています。
畳みかけるような風のあとに「何も信じない自分がいた」というのは、ただ季節が移ろっていくことを感じて、この世に無常さを免れるものは何もないのだと感傷的になったわけではないでしょう。
むしろ、ここでは何か不穏な気配だとか、怪しい雲行きがあるということを察知している。風に敏感になるというのも、ただ物理的な意味だけでなく、いろいろな意味がある訳ですが、ここでは風向きや風の音から、これから起きることの予兆を読み取り、占っている訳です。今週のおひつじ座は、そうしてどこか天に問いを立て、それを自分なりに読みといていこうとするような流れが出てきやすいかもしれません。
おひつじ座の今週のキーワード
占いは驚きを伴うもの