おひつじ座
当たり障りのある存在へ
「当たり前」の相対化
今週のおひつじ座は、反都市的な旅へ。あるいは、秩序の外に身を置いた「世界の紛れ者」のひとりになっていくような星回り。
現代社会では移動するにも食事するにも寝泊りするにも、金で物を買わねば1日も暮らすことのできない生活を送ることが、ごく当たり前のこととして受け止められています。しかしその一方で、日常のすべてを外部の産業構造にコントロールされてしまっている在り方に疑問を感じて、畑を借りて自分で野菜を育ててみたり、思い切って郊外に移住して自給自足にチャレンジしようとしたりする人もちらほら増え始めています。
ただ、そうした土着への完全な回帰というのは、特に都市圏に暮らす人にはかなりハードルが高いというのが実状でしょう。その点、江戸時代の俳聖として名高い松尾芭蕉は、単に市井の宗匠(俳諧の先生)から脱却するだけでなく、貨幣経済としての町人文化からの脱出も併せて試みるべく、旅と草庵という非定住の生き方を選択しました。
もちろん、何で喰っているのか分からないような人間は、社会を乱すような無茶苦茶なことをするリスクが高いので、相応の疑いの目が向けられることは避けられない訳ですが、そうした体験は自己を既存の社会システムから解放していく上で必ず払わなければならない代償でもあったのです。
その意味で、8月12日におひつじ座から数えて「硬直したシステムからの脱却」を意味する11番目のみずがめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、たとえ一時的にであれ、普段意識がそこに縛られがちな職業的な立場や身分から解き放たれていきやすいでしょう。
資本主義の論理にも“外”がある
かつて社会科学者マックス・ウェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で、神に召されたと思ってまじめに仕事を続ければ、商売繁盛がついてくるという「世俗内禁欲」に言及し、合理化された現代社会では人びとはもはや職業人に徹する他ないのだという考えを展開しました。
立派な職業倫理だとは思います。しかし、それは時に過剰なまでに自分のアイデンティティーを職業と結びつけることで人を追いつめ、真面目で不器用な人に不必要なほど重い責任を負わせることで、時に死に追いやってしまうことさえあります(他ならぬウェーバー自身もある時精神に異常をきたし、オカルトに走りました)。
職務をまっとうすることは大切ですし、立派な職業につくことは自尊心を高めてくれますが、それはあくまで社会という約束事の枠内でのお話。その点、今週のおひつじ座にとっては、むしろそれを超えたところに本当の自分があり、本当の世界があるのだということこそが、より重要になっていくはず。
おひつじ座の今週のキーワード
時には代償を払ってでも自由を得ること