おひつじ座
大胆で残酷な抑止を
「~しないでいられる能力」の行使
今週のおひつじ座は、「抵抗」としての創造行為のごとし。あるいは、卓越した熟練としての「震え」をみずからにもたらしていこうとするような星回り。
哲学者のジョルジョ・アガンベンが、あらゆる創造行為には、何か表現すること/されることに対する抵抗や反発が含まれている、ということを書いていました。
それは創造性というものが、潜在的なものの顕在化をただ盲目的に目指す「~する能力」の度合いにおいてではなく、むしろ「~しないでいられる能力」の行使をいかに盛り込んでいけるかという文脈においてはじめて発揮し得るのだということでもありました。
アガンベンは、同様のことを「センスのない人は、何かするのを控えておくことができない」というもっと端的な言い方でも表していましたが、すぐれた画家ほどキャンバスを前に手の震えや迷いを感じたり、時にはほとんど完成しかけていた作品を破棄してゼロからやり直すことを厭わなかったりするものであり、それは迷いなくおのれのビジョンを猛然と絵に刻みつけていくことや、作品を完成し発表するところまでこぎつけることと同じか、それ以上に大切なことなのかも知れません。
その意味で、7月29日におひつじ座から数えて「創造性」を意味する5番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、「~せずにはいられない」「必然的に~する」と感じていることほど、それをいかに差し控えたり、ゆらぎや偶然性を与えていけるかが問われていくでしょう。
残酷さを取り戻す
もう何年ものあいだ、石ころ1つ蹴っ飛ばしたことのない小市民的な現代人は、例えばあの頭蓋骨大のボールを相手のホームめがけて押しこんでやろうと、みなで駆けだしていったフットボールの原風景や、そこに立っていた戦士たちのマインドとグローバル資本主義社会に生きている自分たちのマインドと地続きになっていることについて、知らぬ存ぜぬを決め込んでいるのだと言えます。
ただ、人間の祈りや、情愛を細やかに表現する手の使用を禁止されたフットボールの世界では、戦士たちに与えられる選択肢は、ほんらい次の2つでした。すなわち、負けパターンをとりやめ勝つためのルーティンへと組み立て直すか、でなければ、マンネリ化して立ち往生するか(思考や行動・表現などが型にはまって変化がなく、独創性や新鮮さに欠けていく)、のどちらかしかないのです。
創造性の発揮やその結果もたらされる美しさという表の顔の裏には、必ずどこかに冷徹なまでの残酷さが隠れているものです。今週のおひつじ座は、改めてそんなことを思い出していくことになるはず。
おひつじ座の今週のキーワード
プレイの選択肢を複数もつこと