おひつじ座
無法者再入門
偶然性を組織する
今週のおひつじ座は、寺山修司の『犬』という作品のごとし。あるいは、日常をひとつの現代アートとして大いに演じていこうとするような星回り。
寺山が死ぬ直前に構想していた『犬』という作品では、ある街に劇団員を実際に引っ越しさせ、住民にしてから現実を変革していくという非常にラジカルなことを考えていました。つまり、演劇そのものを都市への介入という行為に開いていったのであり、場所があり、そこに自然があって、俳優がいて、そこに偶然やってきた通行人が観客へなり替わりながら芝居として成り立たせていこうと。
寺山自身はそれを「偶然性を組織する」という風にも表現していて、この世界には共同体の規則から逸脱するものが色んなところにバラバラに存在している訳ですが、それらを東京の一都市という文脈において繋がったり、切れてしまったり、また繋がったりという形でネットワークしていくことで、ある種のテロを起こし、既存の力関係だったり世界の見え方をひっくり返していこうしたのでしょう。
こうした寺山の試みは、社会や西洋で求められている高い基準に、たえず無理をしてでも合わせようとしてきた近代日本のエリートたちがとった戦略とは真逆のものであり、その意味で7月14日におひつじ座から数えて「世間との付き合い」を意味する10番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、いかに規則や常識を「逸脱するもの」を自身の身体性を通して繋いでいけるかが問われていくはず。
都市の無意識をまとう
たとえば都市の片隅に潜むホームレスたちは、人の流れの死角や隙間、所有者がはっきりしない場所、空白の領域など、そういうところに巧妙に見つけ出しては、段ボールやベニヤ板、ビニールシートなどあり合わせの材料で組み立て式の家を造ります。
これは考えてみるとすごい能力で、本来なら就職や転職などでも高く評価されるべきものだと思うのですが、しかし彼らからすればそれはそれでとんでもないことで、「それじゃあお前さん、代わりにここに寝てみろ」という話でしょう。
段ボールというのは流通のための梱包材であり、よく見ているとその都市に住む人びとが日々何を食べ何を使って暮らしているのかということもある程度分かってきます。だからホームレスの造る段ボールの家というのも、ある意味で都市の無意識から自然と生み出されてしまうものであり、秩序を取り巻くカオスのようなものなのかも知れません。
今週のおひつじ座もまた、常日頃からどんなものに取り囲まれ、いかにそれに親しんできたのかが不意にあきらかにされていくでしょう。
おひつじ座の今週のキーワード
都市的秩序への抵抗と介入