おとめ座
奥深い表現力が問われるとき
金魚を活かす諸条件
今週のおとめ座は、「時計屋の微動だにせぬ金魚かな」(小沢昭一)という句のごとし。あるいは、目をひく導線を作りながら、誰かどこかへ向けてアピールしていくような星回り。
金魚は、自分を主張しようだなんて少しも思ってはいないでしょう。
ただ、「時計屋」という静かな場所、開いた扉による空間のひろがりで秒針をきざむ音が一瞬かき消える、という諸条件が重なったとき、どうしても視線が金魚へと集中せざるを得ないのです。そういうことは実際に経験したことはなくても、誰もがなんとなく分かるのではないでしょうか。
その意味で、掲句にはどうしたら人を惹きつけられるのか、ということに関するヒントがつまっているのです。
自分の持ち味が最大限に活きる場所に身を置くことができたとき、それは最上の演出となってあなたの個性を活かすでしょう。逆に言えば、いくら実力があっても、“間”を外してしまえば何のアピールにもなりません。
今週はどこの誰へ自分をアピールするのか考えながら、条件がそろう瞬間を待ってみてください。
世阿弥の芸能観
能の大成者・世阿弥が著書の中で「花と、感興と、新鮮さと、これら3つは同じことである」と言うとき、この「花」とは実際の花ではなく「生命力の発現」にほかなりません。
それは年齢をこえて生きてくる芸のちからでもあり、新鮮さをもって何かを表現することを体得する以外に<まことの花>というものはないのだ、という独自の芸能観がベースにあったようです。
つまり、世阿弥にとってすべての芸術表現(=花)というのは、私たちの心に新鮮さを呼び起こすと同時に、それがそのまま神事となって魂を鎮めてくれるものでなければならない。そうであってこそ、人を深いところで感動させることができるのだ、と。
自分の発する言葉や振る舞いが、誰かの心を鎮めるまで生命力を練り上げ、そして一気に花咲かせていくこと。今週のあなたに与えられたテーマは、そんな風にも言えるかもしれません。
今週のキーワード
世阿弥『風姿花伝』