おとめ座
壮絶なる股ばさみ
鷹女の本気
今週のおとめ座は、「堕ちてゆく 炎ゆる夕日を股挟み」(三橋鷹女)という句のごとし。あるいは、自分なりに果たすべき役割や、言うべき言葉への覚悟を、静かに定めていくような星回り。
「炎ゆる夕日」と言うからには、おそらく初秋のころの西日のことでしょう。まだ夏の暑さはそのままに、夕日だけがやけに赤く染まって暮れていく。この句を詠んだとき、作者は60歳。それを踏まえると、冒頭の「堕ちてゆく」の主語はおそらく作者自身。
しかし、作者は決して感傷的になっているのではなく、むしろその逆。作者は燃える夕日を「股挟み」してでも自分の道連れにしてやるぞ、と壮絶な発語を決めているのである。
表現の中に自分の本音をあっけらかんと込めていくことを「赤裸々」とも言いますが、もしかしたら作者は真っ赤な夕日に染まっていく自分の肉体を意識して、この句を詠んだのかもしれません。
堕ちるならどこまでも堕ちよ、と作者ならあなたに言うでしょう。
よろこびと苦しみの果て
「よろこびと、苦しみとが、同じぐらいの感謝の思いを生じさせるならば、神への愛は、純粋である」
とはかのシモーヌ・ヴェイユの言葉だが、これはおそらく「神への愛の純粋さ」だけでなく、自分の人生に対する覚悟においても同じことが言えるのではないでしょうか。
冒頭の句の作者は、「一句を書くことは、一片の鱗の剥奪である」という言葉も遺しています。自分の経てきた苦しみにも、この作者ならば感謝したはず。あなたも自分なりの覚悟の方向を探っていきましょう。
今週のキーワード
赤裸々