おとめ座
怖い、でも…
暗く高い山へ
今週のおとめ座は、「サブライム」の感覚のごとし。あるいは、すっかり見慣れきっていた現実の中に「めくるめく」何かを見出していくような星回り。
ヨーロッパ人にとって、もともと山というのは世捨て人が入る場所であり、ずっと「暗い山」を意味し続けてきましたが、科学史家のM・H・ニコルソンによれば、17世紀末にジョン・デニスというイギリス人のアルプス体験がそれに変化をもたらしたのだとか(『暗い山と栄光の山』)。
デニスは小高い丘くらいの山しかないイギリスとはまったく異なる、4000メートル級のアルプスの山々を見たとき、「怖い、“でも”きれいだ」という感想を抱いた。ところが、この矛盾した感動を表現するのに適切な英語がなかったため、後にエドマンド・バークという思想家が「サブライム(sublime)」という言葉を使いました。limeは境界という意味で、それを「超える」感覚という訳です。
例えば、書籍や動画から得られる情報だけではいまいちリアリティを感じられなかった大気圏外の宇宙空間について、われわれがもし、前澤氏のように国際宇宙ステーション(居住可能な人工衛星)に滞在し、そこから眺めた宇宙空間にまるで巨大な山のような圧倒的な何かを感じるとすれば、それはビューティフルではなくサブライムの感覚なのだ、とバークなら言うかも知れません。
5月26日におとめ座から数えて「現実との折り合い」を意味する10番目のふたご座に拡大と発展の木星が約12年ぶりに回帰するところから始まった今週のあなたもまた、おのずと「暗く高い山」へと足を延ばし、1歩も2歩も踏み出していくことになっていくはず。
感情の爆発力
例えば、言語連想テストなどで「山」と言うと、大体の人が「川」と答えますが、ここで「煙突」と答えるような人は相当に独創的な人か、あるいは相当におかしな人かのどちらかでしょう。
「山」と聞いて、「登る」ことを連想し、さらにそれが「高さ」と結びついて「煙突」へと行き着いたのだとすれば、それは本人が「高さ」というイメージに何か感情的に結びついていたのかも知れません。機械反射的に「川」と言ってしまえばいいところを、いわば感情に流されたのです。
言い換えれば、そうやって感情に流され、イメージが飛躍していくのは何らかの感情的な爆発力の発揮であり、それ自体がひとつの才能であるということ。その意味で、今週のおとめ座もまた、自分が我慢してきたことや、表に表すことができずにきたことを思い切って解き放っていくのにも、ちょうどいいタイミングと言えるかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
境界を超えていけ