おとめ座
蛇が衣を脱ぐように
前に進んでいくばかりが人生でなし
今週のおとめ座は、『日なたぼこのどこかをいつも風通る』(阪西敦子)という句のごとし。あるいは、三歩進んで二歩下がるくらいの感覚に、改めて自分を馴染ませていこうとするような星回り。
冬の日差しをジッと浴びて暖まる「日なたぼっこ」は冬の季語。大人になって仕事に家事にと日常がとにかく慌ただしくなりだすと、このわずか数秒から数十秒のあいだ「ジッとする」感覚もいつの間にか忘れてしまうけれど、人生の半ばを過ぎて挫折や破綻を経験する年代になってくると、不意に思い出したりもする。
何もかもうまくいかないと感じる時というのは、大抵の場合、生き急ぎすぎている。だから、そうした状況から脱するためには、どこかで生きているスピードを落とし、思いきって足を止め、掲句のようにジッと日なたぼっこする他ないような“無為”の時間を過ごしていくことが、一時的にであれどうしても必要になってくるのだ。
そして、実際ジッと暖をとろうとしてみると分かるのだけれど、空気が静止しきっている時間はそんなに長くは続かない。数秒から数十秒もすれば、どこかをいつも風が通って、せっかく日差しでとった暖が冷気に脅かされてしまう。
ただ、人生のリアルな実感を取り戻す瞬間というのも、そんな時なのではないだろうか。すなわち、三歩進んで二歩下がる。時には四歩も五歩も下がる時だってある。それでこそ人生さ、と。
1月21日におとめ座から数えて「ケア」を意味する6番目のみずがめ座へと冥王星が移っていく今週のあなたもまた、実際に「日なたぼっこ」にトライしてそんな感覚を取り戻してみるべし。
脇を風が吹き抜ける
占星術では「風」と言えば、他者とのコミュニケーションや世間からの干渉など、さまざまなレベルでの関わりあいを象徴しますが、今週のおとめ座の場合、それに加えてさらに未来へと吹き抜けていくような潮流や、可能性の気配をも感じさせます。
蛇が衣を脱ぐように、私たちも人と人との間をすり抜けながら、さまざまな人たちとの関わりを通じて、自分の未来を仰いでいく。
いまはただ、そうして変わりゆく身のまわりの文脈がどこへ繋がっていくのかを、余計な感傷をまじえず、ただじりじりとしていたり、なんとなく見つめていくくらいのつもりで丁度いいでしょう。
広い範囲をぶらつき回ることもあれば、同じ場所に留まってぶらぶらするようなこともある。そんなつむじ風の運動は、大きく円を描くような「巡回」という動き方や観念にも関連します。
今週のおとめ座もまた、大きな視点で見た時にらせんのカーブにあたるところに自分はいて、前に進む代わりに方向転換しているのだと考えてみるとちょうどいいかも知れません。
おとめ座の今週のキーワード
旋回するダンスの動作