おとめ座
水木的幸福道
幸福の七か条
今週のおとめ座は、水木しげるの幸福論のごとし。あるいは、「不可避な幸福」を追求していこうとするような星回り。
『水木しげると妖怪の哲学』の著者である甲田烈によれば、世の幸せになるための方法論は主に収入結婚お金その他の「上昇」を説くものと、いま与えられているものに価値を見出し味わっていく「充足」を説くものとの2つに分かれるのに対し、漫画家の水木しげるは間違えようのない「不可避」なものとして幸福を説いたのだと言います。そしてそれは水木の死後、SNSなどを通じて「幸福の七か条」として広く知られるようになった、以下のような水木なりの幸せになるための知恵によく現れています。
第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条 しないではいられないことをし続けなさい。
第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追求すべし。
第四条 好きの力を信じる。
第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条 なまけ者になりなさい。
第七条 目に見えない世界を信じる。
甲田によれば、これは「幸福」の条件というより、人生訓のふりをしながら、いかにして人間は「幸福」であるしかありえない、という、その際を説いており、特に第二条と第七条を中心に読んでみるとき、信じざるを得ないものや、そうとしか思えないものを、好奇心の塊となって、我が道を狂信的にまで追求していれば、誰もが避けようもなく幸福でしかありえないのだという、いわゆる欲求充足型の「幸福」論とは決定的に異なる「不可避」説がくっきりと浮かび上がってくることに気付くはず。
もちろんそれは水木が自身の戦争体験を通じて「生かされている」という深い身体感覚を培ったからこそ追求できた道でもある訳ですが、4月6日におとめ座から数えて「生きがい」を意味する2番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたら不可避な幸福を追求できるか、あるいは、すでにしていたかに気付いていくべし。
奇人変人になること
ある人にとっての確信の到来は、別の人にとってのそれとは限らない。むしろ、どうしても惹かれてしまうことに関して言えば、人それぞれまったく別物だと言ったほうが近いでしょう。
水木しげるは、こうしたどうしても惹かれてしまう「好きの力」とか「しないではいられないこと」を注意深く社会的「成功」と識別しました。第五条では「努力は人を裏切る」と説かれ、第六条の「なまけ者になりなさい」とされたのも、あくまで「成功」のために嫌々ながらの苦行のようにする「努力」は中年期以降はできるだけ控えることが推奨されていた訳です。
他人の理解や称賛などまず期待できないような我が道を、それでも狂信的なまでに追求するというのは、奇人・変人の態度に通じます。つまり、水木が言いたいのは、人間というのは徹底的に奇人・変人であろうとすれば、避けようもなく幸福なのだということ。
今週のおとめ座もまた、自身の中の変態性や特殊性にいかに開き直っていけるか、というところから幸福を見つめ直してみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
上昇でも充足でもなく