おとめ座
生きものとしてのゆかしさ
友人とのやり取りにて
今週のおとめ座は、『飲めば生き飲まねば死すと寒見舞』(福田甲士雄)という句のごとし。あるいは、形骸化したやり取りの中身を取り戻していこうとするような星回り。
「寒見舞」は暑中見舞と対をなす、寒中、すなわち正月明けから立春までの期間に、知人などを見舞うこと。寒中見舞いと言ってしまえばそれまでですが、形骸化しつつある年賀状などよりも、こういう言い方の方がよっぽどゆかしさとあたたかみが感じられるというもの。
掲句は余計な遠慮や気遣いのない、年来の友人からの寒見舞をうけての一句なのでしょう。一般的には男同士で「飲む」と言えばお酒のことを指し、「飲めば死に飲まねば生きる」となりますが、ここではおそらく自分たちがもう腎機能が低下したために水を飲まねばならぬ高齢者同士であることをあえて当てこすって、「飲めば生き飲まねば死す」と書かれていたのかも知れません。思わず「相変わらずだなぁ」と苦笑いを浮かべた作者の表情が、妙にリアルに想像されてきます。
人間関係が希薄化した現代社会や、通り一遍のやり取りに終始するこの季節だからこそ、こうした味のある交流の貴重さが際立ってくるはず。
その意味で、12月30日におとめ座から数えて「絆」を意味する8番目のおひつじ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ここぞという時には、いつもより一歩踏み込んだやり取りを交わしていくべし。
持ちつ持たれつ食べられつつ
例えば、変形菌という生きものはアメーバのように粘液状になって動き回り、コケや菌類のように胞子をつくったりもする不思議な姿や生態をもっていますが、基本的には小さすぎて人の目に留まることはほとんどありませんし、彼らの生態系への影響もいまだに正確なことは分かっていません。
とはいえ、もちろん彼らも他の生物と同じで、生きていくためには食事をしていかねばならず、主な栄養源であるバクテリア(細菌)を、他の生物と競い合いながら食べている訳です。ところが、じつは変形菌たちは他の競争相手が食べられない菌類(キノコやカビ)を栄養源にすることも可能なように進化していたり、異なる変形菌の種類間で餌の好き嫌いの棲み分けを行っていくことで、森の落ち葉や倒木の分解が偏らないようコントロールしているのだとか。
また、自分が餌を食べるだけでなく、別の種類の変形菌や小さな甲虫などに、すすんで食べられることで、持ちつ持たれつの関係を形成しているのだそう。特に、虫に自身が食べられることは、彼らにとって必ずしも悪いことではなく、胞子を虫の体につけることで遠くまで運んでもらって、結果的に種を撒くことに協力してもらっている訳です。
今週のおとめ座もまた、自身の担う役割の多様性をより深く許容していくべく、表層的な損得勘定や駆け引きなどは、いっぺんどこかへ投げ捨ててみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
もはや「人間」でなくなってもいい