おとめ座
共に生きてきた痕跡を追って
見えるものと見えないものの交わり
今週のおとめ座は、すっかり姿を変えた桃園川のごとし。あるいは、時の経過にしたがって変わるものと変わらぬものを見極めていこうとするような星回り。
季節によってその表情を変える川の流れはどこか自由奔放で、人間ひとりひとりの干渉など関係なくそこにあり続けるように思えますが、実際には街の影響を強く受けるもの。
例えば、かつて杉並と中野あたりで子どもたちが泳ぎ、ホタルなども見られた桃園川もその1つで、荻窪駅ちかくの天沼弁天池からはじまり、中央線の周辺をうろうろするように流れていた灌漑用水路だったのですが、中央線の生まれるずっと前から存在し、暗渠研究家の吉村生さんによれば、いわば中央線とは姉と弟のような関係だったのだとか。
荻窪駅から阿佐ヶ谷駅周辺の街並みも、かつては一面の田んぼと水路のなかを川と並行して蒸気機関車が走るというのどかすぎる光景だったのが、高度経済成長期に川のほとんどがコンクリート蓋の暗渠や道路となったり、逆に土を掘り出したところに新たに水が湧き、桃園川に流れこむ多くの支流や池ができて生活用水となったり、周辺に住む人が増えたことで、子どものための公園や住民たちの散歩道となっていったりと、桃園川は中央線と互いに影響を与えあいつつ多様な変化の過程をたどってきたのです。
同様に、5月9日におとめ座から数えて「潜在的な領域」を意味する12番目の星座であるしし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ずっと変わらぬまま自分の人生に並走するように横たわっているものとは何か、改めて考えてみるといいでしょう。
ずっとそこにあった自然に気付く
逆に言えば、今週のおとめ座はまったく未知の領域から未来の出会いや新規の興奮材料を探していこうとするような試みは避けること。
むしろごくふつうの物事や、ずっとそこにあった自然のような、ありふれた日常の中にこそ、真にいまの自分に必要なインスピレーションや情熱の源泉は潜んでいるのだということを意識する必要があるように思います。
あるいは、過去や歴史の蓄積をしっかりと見返していく時間を通して初めて、変えられないことと変えられることを見極めるための叡智がもたらされるのだとも言えるでしょう。
さながら、暗渠となって表向きは姿を消した桃園川をたどって歩いて行くように。今週のおとめ座は、そうしたプロセスを経ていくなかで、「おかげさま」とか「かたじけなさ」、「ありがたさ」という感覚を痛切に思い出していくことができるはず。
おとめ座の今週のキーワード
死者との共同事業としての人生