おとめ座
大いなる辻褄合わせ
祖語の解消
今週のおとめ座は、「夕焼けはなぜ赤いんだろう?」と思う子どものごとし。あるいは、自分にとっていちばん大きい「分母」ということを考えていくような星回り。
いまの教育というのは、理系文系にしろ、大学の学部学科にしろ、あまりにも学ぶ内容が細分化され過ぎてしまっていて、中世から言われていたいわゆる「リベラル・アーツ・エデュケーション」ということが、ほとんど軽視されており、いわば、自分の専門のことは詳しいけれど、それ以外のことはあまり知らないという人たちが増えてしまった訳です。
そうすると、何か難しい状況に直面したときに「文殊の知恵」を出そうと「3人寄」っても、そこに共通言語を見出せないために想像以上に会話が噛み合わず、なかなか集合知も生みだせない。
これは例えば、「夕焼けはなぜ赤いんだろう?」という問いを投げかけられた状況を思い浮かべてみるといいかも知れません。大抵は、太陽と地球の角度と赤色光の散乱のしにくさといった科学的見地からしかなかなか答えが出てこない。でもこれだけでは、地上の人間とさよならしなきゃいけないのが悲しくて、顔が真っ赤になるまで泣き腫らしているからといった子どもの思いつきや、「夕焼け小焼け」や「赤とんぼ」などの国民的童謡の歌詞に必ず夕焼けが歌われていて、それは浄土のイメージや「郷愁」などの感情と結びついているとか、そういう人文系の見地とは結びついていかないし、子どもも本当の意味では納得してくれないんです。
同様に、18日に自分自身の星座であるおとめ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、いま頭のなかにある個別的なトピックや思いつきをまとめて“通分”してくれるような、自身の世界観や宇宙観を表現するための普遍的な言葉を見つけていきたいところです。
虚空を掴もうとすること
子どもが受け入れてくれるような世界観や宇宙観というのは、当然ながら難しい専門用語や長ったらしい説明を排して、「これがお母さんのお腹の中なんだよ」と指し示してしまえるようなものでなければなりませんが、例えば、代表作の『一千一秒物語』などで知られる作家の稲垣足穂は「生涯をかけて虚空を掴まんとせし者ここに眠る」という墓標を、実際に死ぬ20年以上も前に決めていたそうです。
非現実の中に現実を見出し、現実へと噴出してくる夢の中の続きを追う。そんな特異な文学者が追い求めたものこそ、日常生活におけるあれこれや、自己像、世界像を通分してくれる、考えられる限り大きな「分母」だったのではないでしょうか。
吾々は一生涯を通じて一枚の絵を描かなくてもよく、一行の詩を作らなくてもよい。ただ描き作らんとする念願さえ持っているならば……(稲垣足穂、「人生は短く芸術は長い」)
今週のおとめ座もまた、そうしたピタリとくるような辻褄を合わせをこそ、改めて志していくべし。
おとめ座の今週のキーワード
内なる子どもが納得するか、それが問題だ