おとめ座
深い深い谷をはさんで
架け橋になる
今週のおとめ座は、自然の道の延長としての“日本の橋”のごとし。あるいは、おのれの切望を橋へと変えてゆこうとするような星回り。
戦前に刊行された保田与重郎の『日本の橋』は、日本の橋の特徴を西欧のそれと比較しつつ、そこに見出される日本特有の美学について論じた名著です。いわく、西欧の橋が頑丈な石造りなのは、そこを征服者が大勢の軍隊とともに移動するための便宜であるのに対し、日本の橋は木の橋や吊り橋で、弱くて哀れな造りになっている。
これは村人や旅人が川を渡るために造ったという程度のもので、両者はたんに素材が違うだけではなくて、橋というものの目的意識そのものが異なっており、日本の橋はその弱弱しさにこそ特徴があるのだと言うのです。
例えば、名古屋の精進川に架かる橋に彫られた銘文を引き、豊臣秀吉に従って出陣し戦没した息子の供養のため、母親が「かなしさのあまりに」橋を架けたという由来を引いて、そこでは橋が心と心との哀しい架け橋としての役割を果たしているのだと。
同様に、3月3日におとめ座から数えて「パートナーシップ」を意味する7番目のうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、やがて朽ち果てるはかなさを湛えた道として、誰か何かへと橋を架けてゆくべし。
男女を超えて
かつて寺山修司は「人は恋愛を夢みるが、友情は夢みることはない。夢を見るのは肉体であるから」と書いていましたが、肉体よりも精神がまさりがちなおとめ座にとって、夢をみるのはやはり肉体ではなく精神の方でしょう。
そう、おとめ座にとって本来より自然と求めていきやすい関係というのは男女の縛りを伴い、従ってその本質上決して真実に達することのない“恋愛”というよりは、男女という次元を超え、過度な幻想や錯覚を介さずに関係し合える“友情”に近いのではないでしょうか。
例えば、『紅の豚』のポルコとジーナはちょうどそんな関係の一例と言えるかも知れません。パートナーと呼ぶにはどこかまだ青臭く、恋人と呼ぶにはなんだかさっぱりしている。
もし周りを見渡して、そんな風に付き合っている相手と既に巡りあえているのなら、その幸運にひっそり静かに浸ってみること。逆に、まだそういう相手がいないのならば、まずそういう関係をできるだけリアルに自分の生活の中で思い描いてみるといいでしょう。
おとめ座の今週のキーワード
かなしさのあまりに