おとめ座
淀みと流れ
かすかな不安や恐怖を越えていくために
今週のおとめ座は、気軽に植木鉢を分け合う大阪のおばちゃんのごとし。あるいは、目に見えない怯えや不安を軽やかに乗り越えていこうとするような星回り。
社会学者の岸政彦さんが、孤独死をテーマにしたある年度の聞き取り調査で知った、女性たちがつながりをつくっていくのに、玄関先の植木が一役買っているという興味深い話について書いていました。
それは小さなスミレや朝顔の鉢植えを誰かにあげて、お返しにポトスの鉢植えをもらうとか、玄関先で植木に水をやっていたら、きれいですねと声をかけるとか、難しい花の育て方や我が家の一工夫について教え合うといった、ちょっとした会話のきっかけとなって、そこから話が脱線しつつもひとしきり盛り上がるのだとか。
逆に、高齢の男性ほど、こうしたちょっとした他人とのつながり作りや、仕事に無関係な会話をすることが苦手で、孤独死も多くなるのだそう。人に話しかけるということは、それ自体は大したことでもないよう見えるけれど、きっとかすかな不安や恐怖を幾つも越えていかなければうまくいったと感じることのできない、隠れた難事業なのかも知れません。
そして、そんな時ほど力になってくれるちょっとしたコミュニケーションツールとして最適なもののひとつが植木鉢であり、その最大の特徴は“軽やかに”共に生きていける点にあるのではないでしょうか。
その意味で、18日におとめ座から数えて「社会的交流」を意味する11番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、誰かと“共に生きていく”ということに付きまとう重たさを幾らか払拭していくことができるはず。
生命の流れとの調和
“共に生きていく”というフレーズで思い出されるのが、アジア人で初めてノーベル賞を受賞(文学賞)したインドの大詩人タゴールの『サーダナ』(サンスクリット語で「生の実現」ないし「霊的な修行」の意)という著作の一節です。
例えば、「われわれは至るところで生と死との戯れ―古いものを新しいものに変える働き―を見ている」という言葉には、老いや病いといったものは生命に付き従う影に過ぎず、われわれの生命は川の流れのように、無限なる海に開かれ続けているのだという彼の肉声が今にも聞こえてきそうです。そして、今のおとめ座へ特に贈りたいのが次の一節。
生命が詩と同じように、たえずリズムを持つのは、厳格な規則によって沈黙させられるためではなく、自己の調和の内面的な自由をたえず表現するためである
自分のなかの不調和な不自由ではなく、調和な自由を表現するためにこそ、私たちは日々、会社で働いたり、家事をしたり、日記をつけたり、「人に話しかけ」たりするのかも知れません。今週のおとめ座もまた、そうした手応えを確かめながら、自身の中の生命の流れやその調和を感じとっていきたいところです。
おとめ座の今週のキーワード
私たちは川の流れのように無限なる海に開かれ続けている