おとめ座
結びつける快感を求めて
交換の論理をこえるとき
今週のおとめ座は、言えなかった「助けて」のひと言のごとし。あるいは、ギブ&テイクの限界を思い知っていくような星回り。
近内悠太さんの『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』という本には、「すべり台社会」という言葉で有名になった貧困問題に取り組む活動家・湯浅誠さんの『反貧困』に登場する実話が取り上げられています。
認知症の母親と二人暮らしをしていた54歳の男性が会社でリストラに遭い、母親の症状の悪化に伴い派遣の仕事も辞めざるを得なくなって、生活保護の相談に訪れた窓口でも「頑張って働いてください」と言われしまい、ついに家賃も払えなくなったところで、「他人様に迷惑をかけてはいけない」という父親からの教えに従って観念し、「死ぬしかない」と母親を殺め、みずからも自殺を図ったという、何とも言えない悲劇です。
近内さんはここに人間の活動やその生産物のすべてをサービスや商品として捉え、どこまでも交換の論理を押し進める資本主義の限界を見て取り、先の実話の男性の判断を「交換の論理の導く帰結」と分析してみせました。
交換(ギブ&テイク、ウィン-ウィン)の論理に基づく社会とは、裏を返せば「交換するものがなくなったとき、あらゆる関係は解消される」社会なのであり、そうした社会で封じられた言葉こそ、何もなくなって経済的、精神的、肉体的に追い詰められた際に誰かを頼って、つながりを求める「助けて」というひと言だったというわけ。
13日におとめ座から数えて「他者への要求」を意味する7番目のうお座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、「迷惑」という排除の理屈をこえて、頼り頼られ、助け助けられるつながりやそれを引き寄せるためのアクションへと勇気をもって進んでいくことがテーマとなっていきそうです。
花束を贈るように
「助けて」のひと言であれ、誕生日のプレゼントであれ、相手に何かを渡そうという場において、狭い心は厭わしいものです。というのも、狭すぎれば善も悪も居場所がないから。
例えば、花束を贈るのに悪人であってはならないという断りなどありませんし、むしろジキタリスやスズランをはじめ、古来より美しい花には毒はつきものだった訳で、渡す相手の死を誘うための花束だってあったはずです。
それがたとえ徒花であったとしても、自分ひとりで膨れあがっているより、手向けにした方が余程いい。それがほんの一刺しになるのか、それとも大いに元気づける結果となるか、賭けてみるのも一興でしょう。
それと同様に、「助けて」のひと言を発するのにだって、善人でなければならないという条件などないのです。今週のおとめ座ならば、そんなふうにいつも以上に自分をさらけ出す勇気と積極性とを発揮していくことができるのではないでしょうか。
今週のキーワード
純粋な贈与