おとめ座
猫のような生活
猫にもいろいろある
今週のおとめ座は、「何もかも知つてをるなり竈猫」(富安風生)という句のごとし。あるいは、本能だけでなく美学に基づいて生きていこうとするような星回り。
「竈猫(かまどねこ)」とは、冬場に火の消えた竈に勝手に入り込んで暖をとる猫のことで、この作者が使い始めた季語と言われています。
猫は寒がりというだけでなく、勝手でわがままに見えるゆえ、どこか人間に似ていますが、「何もかも」というのも知っているのは快適な場所のありかだけでないんだよ、と猫という存在の奥ゆかしさとそら恐ろしさへの感慨を含んでいるのでしょう。
長年飼い続けても、犬と猫とでは飼い主に対する態度というか、向きあい方や語り口が違っています。犬はたとえ寒くても元気にはしゃいで「がんばろうよ!」と無邪気に誘ってくるような感じがする一方、猫は「今年はまた一段と寒いんだな」とぽつりと呟くように何か言うことはあっても、あまり視線は合わせてくれません(個人差はありますが)。
だからこそ、作者もそこに本能だけではない、猫は猫なりの美学を持ってわれわれ人間に接してくれており、場合によっては人間以上にこの世界のことを知っていて、あえて黙っている可能性のようなものを感じていたのかも知れません。
21日におとめ座から数えて「仰ぎ見る対象」を意味する9番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、ラクな相手や底の知れた関係から距離をおいて、これは歯が立たないかなという相手やそこでの関わりのなかで揉まれてみるといいでしょう。
夢を仕込むということ
猫は一日の大半を寝て過ごしますが、あれも考えてみたら彼らの美学なのかも知れません。人間もまた、夢の中では覚醒時の数倍の長さの体験を持つことができると聞きますが、これはどこか竜宮城で乙姫らと楽しい一時を過ごした浦島太郎のお話とも通じるところがあります。
夢の中は治外法権であり、この世とは別の時間が流れていて、それゆえにさまざまな楽しみで彩られている。これがもし、現実と直結していて、すべての夢がやがて実現していき、現実の出来事と同じように扱われるようになったら、どうなるか。おそらく、夜寝てからの、あのだらしなく、ふしだらな愉しみがなくなってしまうショックで、白髪になってしまうでしょう。
今週のおとめ座は、ついつい生き急いでしまいがちな生活のリズムに余裕をつくって、スケジュールの中に何もしない空白時間を設けてみたり、お香やろうそくの明かりなど、睡眠の質を高めるための一手間をかけてみるのもいいかも知れません。
今週のキーワード
猫なりの美学