おとめ座
優しくなろうよ
みずからに触れるということ
今週のおとめ座は、「雪を待つ。駅でだれかを待つように。胸にくちばしうずめて鳥は」(岸原さや)という歌のごとし。あるいは、みずからの柔らかなこころの動きを感じ取っていくような星回り。
誰かを待っているときの心の動きは、その相手が大切な人であればあるほど、しぜんと優しくなる。それは魂、あるいはいのちの原型というものが、身の一部をたがいにすり合わせるということ、つまり、身体がみずからに触れるということにあるからでしょう。
たとえば、二つの唇がくっつくところ、当てられた指、合わされたてのひら、重ねられた腿など。そうした触れあいがなければ、真の内的感覚もいきいきとした身体図式も感じなくなり、やがて生きているのか死んでいるのかも分からないような失神状態のなかで生きざるを得なくなるはず。
その意味で、くちばしを胸にうずめて雪を待つ鳥は、マフラーに首筋をうずめて誰かを待つ人と同じであり、いのちそのものを取り扱おうとしているのだと言えます。
29日におとめ座から数えて「他者との向き合い方」を意味する7番目のうお座で約5カ月ぶりに海王星が順行へ戻っていく今週のあなたもまた、改めてそうした手つきで自分や他者を扱うことができるかどうかが問われていくでしょう。
金継ぎの美意識
陶磁器の割れや欠け、ヒビなどの破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる非常に古いルーツをもつ伝統的な修復技法のことを「金継ぎ」と言いますが、これは手つきが優しくなければ決してうまくいかない作業です。
どこから見ても完璧で、見事な調和=美しさを体現した人間などこの世にはいませんが、それでも多くの人はそうであることを価値と見なし、何らかの欠損や不格好、あるいは傷跡をできるだけ人の目から隠して、なかったことにしようとします。それが愛されるための唯一の方程式であり解であると言わんばかりに。
しかし、私たちが何か大事なことに気がつく契機や機会というのは、大抵は小さなすき間や亀裂のように狭く短いものであり、そういうフラジャイルな情報を遮断しないでいることによって、いい加減でない存在としてそれまでとは別種の美しさに気付いていく。そういう時というのは必ず、手つきもまた優しくなるのです。
今週のおとめ座は、「完璧さ」や「調和」への「強化」や「拡張」という仕方とは別のスタイルで、自分自身を回復させ、再生させていく過程をたどっていくことがテーマとなっていきそうです。
今週のキーワード
いのちの原型を見出す