おとめ座
聞こえないことばを交わす
思いを重ねる
今週のおとめ座は、「見せたかりしこの朝顔よまだ咲かぬ」(臼田亜浪)という句のごとし。あるいは、慣れ親しんだものや相手がいつもと別様に見えてくるような星回り。
死に近き妻を思う作者の情があふれている一句。決してうまいとは言えませんが、逆にその崩れ方が純情を感じさせ人々の胸に触れるのでしょう。
後に詠まれた「妻あらばとぞもふ朝顔赤き咲く」という句とペアとなっていますが、ここで注目したいのは二句の通奏低音となって効いている朝顔。朝顔はもともと奈良時代に薬草として輸入されたもので、漢名は牽牛花。
これは牛をひいていって朝顔と交換するほど貴重な薬草だったということに由来すると言われますが、牽牛といえば、彦星の名前でもあります。そして、むかしの日本人は偶然名前が同じだったことから、織姫のことを「朝顔姫」とも呼んだのだそう。
今では朝顔はむしろ最も身近に親しまれる花の一つとなったため、織姫のイメージからは遠くなってしまいましたが、明治生まれの作者が掲句を詠んだ背景にはまだそうしたイメージが活きていたのではないでしょうか。
12日におとめ座から数えて「絆」を意味する8番目のおひつじ座で火星に月が重なっていく今週のあなたもまた、普段なら目に見えず意識されることもない絆の在り様を実感していくことができるかも知れません。
浮きを求めて
人生は長い自問自答、「わたしが」と「わたしを」が熱中している対話のようなものと言えるかも知れません。
何を見ても、誰と会っていたとしても、私たちは心の中で彼らの会話を聞き続けているし、逆に言えば彼らの会話以外のものをほとんど聞いていないのです。
でもだからこそ、私たちは人生の半ばを迎えると、彼らの対話が深い奈落の底に沈み込んでしまわぬように、そこへ割って入ってくれる「浮き」のような存在を自然と求めていくのだとも言えます。ニーチェならそれを「ひとりの友」と呼んだことでしょう。
今のあなたには、そんな「ひとりの友」はいるでしょうか?
あるいは、相手の奴隷でもなければ専制君主でもなく、傍らにある純粋な孤独であり、透徹したまなざしであるところの者に、あなた自身はなり得ているでしょうか?
どうも今週は、そうした関わりを質を改めて確かめ見極めていく期間になっていきそうです。
今週のキーワード
ひとりの友