おとめ座
悲しくて悲しくて
獣の涙
今週のおとめ座は、石垣りんの「くらし」という詩のごとし。あるいは、おのれの半生の苦闘を浄化していこうとするような星回り。
作者は15歳で日本興業銀行に事務見習いとして就職し、以後定年まで一家の大黒柱として働き通しながら詩作を続けた人で、詩の才能が開花したのは四十代に入ってからでした。
「食わずには生きてゆけない。
メシを/野菜を/肉を/空気を/光を/水を/親を/きょうだいを/師を/金もこころも
食わずには生きてこれなかった。
ふくれた腹をかかえ/口をぬぐえば/台所に散らばっている/にんじんのしっぽ/
鳥の骨/父のはらわた/四十の日暮れ
私の目にはじめてあふれる獣の涙。」
スネをかじっているあいだは分からなかった親のありがたみも、今度は自分がかじられる番になるとやっと身に沁みて分かってくるものですが、そうした生の繰り返しや哀れさが、「四十の日暮れ」という言葉でぎゅっと凝縮して、最後の一行でカタルシス(浄化作用)に至っていく。声に出して読んでみると、まるで般若心経のお経のようでもあります。
6月6日におとめ座から数えて「心の基盤」を意味する4番目のいて座で、満月を迎えていく今週のあなたもまた、生きることにまつわるぬぐいがたいあさましさを噛みしめつつ、改めてそのありのままの姿を見つめ続けることができるかどうかが問われていくはず。
どうしようもないけど悲しいこと
最近あるニュースをきっかけに、「死ぬこと以外はかすり傷」という言葉が話題となっていました。こういう言葉で自分を奮い立たせられる人たちも世の中にはいるのかも知れませんが、一方でどこか引っかかってしまう人たちも少なくなかったのではないでしょうか。
実際、世の中には死ぬこと以外にも放っておけば治るかすり傷どころか、自分一人ではどうしようもできず心が耐えきれないと感じてしまうことは無数にあるのですから。
例えば孤独ということも、誰かと離れてしまうことも、時間が経過することだって、無数に転がっている「どうしようもないけど悲しいこと」の一つでしょう。
もちろん、この世で一番どうしようもないことは自分が死んでしまうということですが、生きている限り、私たちは死ぬこと以外の不条理や寂しさを抱えたまま、その日その日を生きていかねばなりません。
そういう「どうしようもないけど悲しい」という“感じ”を誰とも分かち合わずに生き続けられるほど、人は強くもなければ、常に前向きでもいられないはず。
今週は、自分の中でため込んできたどうしようもなさへの“感じ”を、そっと誰か何かと分かち合い、癒していくことも大切にされてください。
今週のキーワード
癒しのプロセスとしての自己開示