おとめ座
腹と背
腹をきめる
今週のおとめ座は、「ぱつぱつと紅梅老樹花咲けり」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、腹のどん底からエロスをしぼり出していくような星回り。
1947年、作者が62歳の頃の作。老木から伸びた枝の先々に、ぱっぱっとそこだけ明るくなったように紅梅が咲いている。
どこかポップコーンのように弾ける爽やかな軽やかさを感じさせる句ですが、実際には、それは腹のどん底から絞り出した呻き声であり、自身にかける発破のようなものだったのかも知れません。
というのも、作者は還暦前後に息子3人を病死や戦争で相次いで失っており(四男が後を継いだ)、掲句もまた、自分より先に子供を失う悲痛をなんとか老艶へと反転させていった頃の作品だから。
どうも日本という国には、老いてさらに研ぎ澄まされいくタイプの芸術家は少ないように思いますが、その点、作者は悲劇にあっても精神を荒廃させず、芸術を魂のレベルで磨き上げていった稀有な例に挙げられるはず。
そして19日(水)に太陽がおとめ座から数えて「着地点」を意味する7番目のうお座へと移っていく今週のあなたもまた、自分のキャリアをどこへ向かって落ち着けていきたいのか、その限界と覚悟とを改めて問われていくことになるでしょう。
何をその背に感じているか
「人の役に立つ」といったことが健全な行為として成立するのは、そういう行為自体が‟たまたま”いのち(エロス)の自然な発露であった場合に限られます。
そして、そういう時というのは、相手からすればこちらの背中に「仏像の光背」のような光がうっすらと差しているように見えていたり、自分でもいつもと比べて視界の明るさを感じていたりするもの。
逆に、少しでも心に魔が差していたり、魔境から抜けきらないままに自分を嘯いていれば、例え細部にまで注意を払っていようとも、それは相手の心に重くのしかかる荷物となってしまいかねないはず。
真剣に自身の命の使い先を心に決めていくとき、人は愛ということを少しだけ理解するでしょう。今週のおとめ座も少しでもそんな彼にあやかっていきたいものです。
今週のキーワード
「仏界入り易く、魔界入り難し」(一休)