おとめ座
紆余曲折の背後
アイロニーとユーモア
今週のおとめ座は、「初恋のあとの永生き春満月」(池田澄子)という句のごとし。あるいは、これまで気付いていなかった体験の価値を再発見していくような星回り。
叶わないものとしての初恋。それは誰もが通過してきただろう悲しみの経験であり、紆余曲折を重ねつつ“その後”を生き延びてきた人が時おり苦笑交じりに思い返す原点でもあるのではないでしょうか。
掲句に詠まれた、「初恋のあとの永生き」とは、言ってみれば当たり前のことで(初恋に破れて身投げしてしまう人は稀でしょう)、そんなことをいちいち取り上げたりはしないものですが、作者はそんな普段なら意識さえしないようなことにあえて心を向けている訳です。
それは、ある種の自嘲であると同時に、様々に人を愛してきた作者による、自身の重ねてきた歳月への満足感の表れでもあるように思います。
こんな風に年を取れる人こそ稀なのかも知れませんが、少なくとも、幸と不幸とを等しく経験してきた人にしか発することのできない言葉にできない豊かさを感じさせる一句と言えるでしょう。
立春を経て、10日(月)にはおとめ座から数えて「隠れた宝」を意味する12番目のしし座での満月を迎えていく今週のあなたもまた、これまでの人生で知らず知らず積んできた思いや、重ねてきた経験のありがたさに改めて気付いていくタイミングとなっていくかも知れません。
生かされてきた実感
私たちは生きるということを、時間の経過に従って何かしら経験や価値や資産が増大していくものという前提で考えてしまうところがあるように思いますが、実際には、みな平等に刻一刻と残りの生き時間が引かれているだけなのだとも言えます。
そして、そういう自覚が深まっていく中で初めて、慎ましさやユーモアといったものが隠れた豊かさとして本人の佇まいにかすかに立ち現れてくるのではないでしょうか。
今週は、深く静かに呼吸を整えつつ、何か自分を包む大いなるものに生かされてきた恩恵と幸運にそっと思いを馳せていきたいところです。
今週のキーワード
傷だらけの天使