おとめ座
欠損を継いでいく
糸電話、その心許無さと確かさと
今週のおとめ座は、「糸電話古人の秋につながりぬ」(摂津幸彦)という句のごとし。あるいは、聞こえないはずの声に意識を集中し、そこで「自分」を拾っていくような星回り。
糸電話で友人と遊んでいたら、不意に友の声が聞こえなくなって、故人につながってしまった秋の日であることよ、といったところだろうか。
糸電話という原始的な玩具が、現在と過去とを結んでくれたという訳だ。江戸時代や中世の歌や俳句を読んでいると、ときどきこういう感じを味わうことがある。古人であるはずなのに、まるで今そこに生きているかのような生々しさが感じられてくるのだ。
掲句は平成8年に49歳の若さで逝った作者最晩年の句。その意味では作者もまた既に「古人」であり、この句を今読んでいるあなたもまた、作中の「糸電話」で遊んでいるこの世の人なのだと言える。
14日(月)早朝に迎えるおとめ座から数えて「継承」を意味する8番目のおひつじ座満月から始まる今週のあなたもまた、思いがけない過去や他者へと繋がっていく中で、自分なりの今のリアルを再確認していくことになっていきそうです。
脆弱を去来する何かがあるということ
「完璧さ」や「調和」への「強化」や「拡張」という仕方とは別のスタイルで、自分自身を回復させ、再生させていくこと。言い換えれば、それが今週のあなたのテーマなのだと言えます。
どこから見ても完璧で、見事な調和=美しさを体現した人間などこの世にはいませんが、それでも多くの人はそうであることを価値と見なし、何らかの欠損や不格好をできるだけ人の目から隠して、なかったことにしようとします。それが愛されるための唯一の方程式であり解であると言わんばかりに。
けれど、実際に私たちが何か大事なことに気がつく契機や機会というのは、大抵は小さなすき間や亀裂のように狭く短いものなのではないでしょうか。
その意味で、そうした脆弱でフラジャイルな情報を遮断しないでいることの大切さを、今週あなたはまざまざと実感していくだろう。
今週のキーワード
欠損のなかに自分はいる