おとめ座
密やかに、ただし力強く
窮地の美学
今週のおとめ座は、「美しきものに火種と蝶の息」(宇佐美魚目)という句のごとし。あるいは、世界の片隅で、自分のいのちを繋げていこうとするような星回り。
23日(火)に、同じ土のサインであるおうし座で太陽が「変革」の星である天王星と重なっていく今週、おとめ座の人たちもまたひとつの移ろいを迎えていこうとしているのだと言えます。
そして、そんなあなたに今必要なのは、いったん頭が空っぽになっていけるような「身体」的体験であり、これまでこしらえてきた意味の世界から徹底的に脱け出していくことにあるように思います。
例えば掲句では、息をひそめる火と蝶という一対の存在者たちが描かれていますが、これもどこか今のあなたの在り様と通じるところがあるのではないでしょうか。
どこからか風にあおられ飛んできた蝶が、やっとの思いで何かにすがって息を整えている。その息遣いにあわせて両の羽根がゆっくりと開閉し、それと同期するように火種も火の命脈を絶やさぬよう密かに静かに息をしている。
作者はそんな世界の片隅で息づく密かな命の姿を、美しいと言っている。これはなかなか人が気が付けない窮地の美学であり、今週のあなたもまた、そんな密かな息遣いで来るべき新しいサイクルへ参入していく準備をしていくといいでしょう。
トルソー的身体
一種の壮絶な美の典型として思い出されるのが、酩酊と豊穣の神ディオニュソスでしょう。
彼を祀る秘祭で用いられる蔓を巻いた松明(テュルソス)は、頭や手足のない胴体だけの彫像(トルソー)の語源となっており、これはすなわちディオニュソス自身が手足や頭部を寸断され、剥奪された「トルソー的身体」に他ならないことを暗示しています。
古来より狂気の神でもあったディオニュソスは、死への衝動を含み込んだ生きる意志のシンボルとして、周囲を凄まじく巻き込む強烈なパワー(カリスマ性)で知られてきました。そうしたパワーの秘密こそ四股や衣服にとどまらず、皮膚さえも剥ぎ取られながらも存在し続け、生きる意志を失わない「トルソー的身体」にあったのです。
今週のあなたもまた、本質的に未完なままである自らの人生に対し、虚飾やポーズをそぎ落としていくことで、その奥に秘められた強烈なパワーや生きる意志を存分に引き出していきたいところです。
今週のキーワード
頭からっぽ