おとめ座
守るべき当たり前
世阿弥の革新
今週のおとめ座は、先達が遺した言葉を頼りにしていく後継者のごとし。あるいは、当たり前のことや、簡単なことほど、徹底的に守っていく決意を新たにしていくような星回り。
「稽古は強かれ、情識は無けれ」という言葉があります。
能の大成者である世阿弥が後継者へ遺した言葉の中でも何度も繰り返し述べられた言葉で、「情識」とは凝り固まった心、すなわち慢心や傲慢といった意味。
実際、彼は人生の節目節目でこの言葉を書いており、もうこれでいいと、満足しきるということを自分に許しませんでした。
常にまだ未完成であるという認識をもって、完成をめざして努力する。それが世阿弥にとって芸術家の人生だった訳です。
このことは、日本の芸能にとって革命的であったそうです。
どう革命的だったかと言うと、世阿弥のこの芸能論によって、芸能は人生をかけて完成させるものになっていったのです。老いてもまだ、それまでの経験を活かしてさらなる完成の道が残されている、と。
そしておそらく、現在のおとめ座の人たちにとって必要な危機管理もまさにこうしたものなのではないでしょうか。
「稽古」というシュミレーションを積み、自己満足をどうにかひっくり返していく。人生を通じて、あるいは世代を継いで完成に近づけていくべき未完成品を自身のなかに見出していく。
それはただの卑屈や自己否定とは異なるはずです。
仏師の心得
以前に読んだインタビューにて、日本を代表する仏師・松本明慶氏が次のように語っていました。
「わたしたち仏師が仏さまを彫っているのではないのです。木の中にはすでに仏さまが宿っておられるのです。それをノミや彫刻刀を使ってわたしたちが世に出られるお手伝いをしているだけなのです。」
おそらく、氏のような信念を従って仕事をし続けていくことのできる人間であれば、中途半端な自己満足に陥ることはないのではないかと思います。
うまくいけば、今週はこれまで自分の中で漠然と繰り返してきた試行錯誤に、確かな指針が与えられていくでしょう。
そしてそれは、立ち戻るべき教えや伝統と必ずどこかでつながっているはずです。
今週のキーワード
弟子道