さそり座
姿勢をただす
背を高くするということ
今週のさそり座は、法被をきた街火消しのごとし。すなわち、背中を裏ではなく表と見立てていくような星回り。
明治維新以降の軍事教練や学校体育の影響で、日本社会でも背筋をピーンと伸ばして胸を張っている状態が美しい姿勢と考えられるようになりましたが、浮世絵や紀行作家などの証言を見ていると、もともと日本人は胸がくぼんでいたのだそうです。もちろん、昔の日本人はみな痩せていましたが、大胸筋などはあまり発達しておらず、猫背気味でお腹がすこし出ているので、みぞおちあたりがへこんで、背中側は丸まっていたわけです。
東洋医学の経絡の考え方でも背中が「陽」で腹側が「陰」とされ、つまり背中の方こそが「オモテ」だと考えられていた。服装においても、侍にしても街火消しにしても重要な装飾が施されているのはきまって背中側で、これも「背中は隠すものではなく、見せるもの」と考えられていた証しと言えるはず。
だからこそ、背中を明るくすることを日ごろから心がけていたし、大事なことであるほど背中で伝え、あるいは、親の背中を見ることで大事なことを受けとってきたのでしょう。
その意味で、7月20日にさそり座から数えて「姿勢や態度」を意味する6番目のおひつじ座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、胸を張って過度に力みを生み出す代わりに、背を高くすることで自然体を心がけていきたいところです。
「礼」ということ
日本ではよく子どもに「人に接する時には礼儀正しくしなさい」と教えますが、その一方で、大人になって親しい間柄でも丁寧語を貫いていれば「人に心を開かない」だの「慇懃無礼で逆に失礼」だの言われてしまったりもします。
これは「礼」ということとマニュアル原理主義をごっちゃにしているために起きることで、孔子の説くところの「恭(うやうや)しい人も、礼がなければ(心)労になってしまう」典型と言えるでしょう。
この「恭しい」とは相手へのリスペクトを持つこと。もともと中国では王は龍で象徴され、これは彼らにとっての聖獣ないしトーテム(部族の来歴、信仰の根拠)の名残なのですが、つまり「恭しい」とは相手をひとつの龍(神)の化身として見なすということなんです。
そして、「礼」とはみずから自己を支えるということ。地位や権威や他者に寄りかかって立つのではなくて、あくまで自分という存在が一体どれくらいの力で支えられているかをおおよそ自覚した上で、その責任を自分で引き受けつつそこに立っているということです。
誰か何を真にリスペクトするつもりなら、自分自身もまたひとつの神の化身として見なし、龍としておのれを立てていく術を学んでいかなければならない。それがすなわち「礼」ということであり、今週のさそり座にとってのテーマなのだとも言えるでしょう。
さそり座の今週のキーワード
恭しい人も、礼がなければ労になってしまう