いて座
欺瞞は捨てさり道を行く
決死の棒となる
今週のいて座は、「順礼の棒ばかり行(ゆく)夏野かな」(重頼)という句のごとし。あるいは、うちなる不誠実を、蹴り飛ばしていくことで力強さを取り戻していくような星回り。
日の照りつける夏野原。そこを通り過ぎていくのは、日常や現実から離れたお遍路さん。その姿はすっかり草に埋もれてしまっているが、手にした金剛杖の先だけが見えている。おそらくはそんな構図。
ここで杖ではなく「棒」と表したところが掲句の妙と言えるでしょう。
つまり「順礼の杖」ではただの説明にすぎませんが、あえて無骨ながらも力強い生命力を感じさせる「棒」としたことで、彼らの歩みは確かな意志を伴なった決死行へと変じていきました。
「棒」という字は、両手で奉げもつことのできる細い木に語源がありますが、彼らは日常を捨て、お遍路にまで身をやつして、いったい何に祈りを奉げているのでしょうか。
今週のあなたもまた、自身にふたたび力強い生命力を取り戻すため、決死の覚悟で硬直した状況を突破していくことになるかもしれません。
額に汗することの意義
ヨーロッパ社会で魔女狩りが盛んに行われた16~17世紀。自然の秘密をさぐる方法として、科学も魔術も区別されることなく一緒くたに考えられていました。
現在の私たちからすれば、科学こそ魔女の存在を否定し、魔女狩りの先頭に立つものと考えてしまいがちですが、実際には当時第1級の科学者たちでさえ魔女や魔術の存在を信じていたのです。
近代科学の祖とされる思想家ベーコンもその例にも漏れなかったようで、
「ベーコンにとって魔術とは、額に汗して発見すべき真理を「安易で怠惰な儀式」によって行おうとするという点でのみ非難すべきものであった」
のだそうです。
つまり、あなたが科学者であれ、魔女であれ、なんであれ、それはここでは大した問題ではないのです。
むしろ今週のあなたにとって大事なのは、「安易で怠惰な」方法に頼ってしまう人間なのか、それとも人間の不誠実を蹴り飛ばさんと眼を光らせる人間であるのか、そこなのだと思います。
今週のキーワード
浜林正夫&井上正美『魔女狩り』