いて座
<今ここ>に足をおろす
現在地点の再確認
今週のいて座は、「帆柱を便(たより)に渡るつばめかな」(乙由)という句のごとし。あるいは、誰かや何かを頼りにしていくことで、未来を確かめていくような星回り。
つばめは春に、南の国から海をこえて日本に渡ってきます。掲句を読むと、まるで燕たちが、海道を往来する舟の帆柱を道しるべに、あるいはときどき帆で羽を休めつつ海を渡ってくる映像が浮んでくるようです。
そして、ちょうど今のあなたもそんな燕の姿に置き換えられるでしょう。
ふと抱いた直感と経験に従ってここまでやって来てみたのはいいけれど、果たしてそれを自分ひとりで抱えてやり切れるだろうか? と不安になってきた人もいるのではないでしょうか。
今あなたに必要なのは、安心できる場であり、そこで地図を広げ、進むべき道行きについて仲間と語りあう時間なのだと思います。
何でも自分ひとりで背負いこもうとしたり、やせ我慢をして格好をつけることよりも、あえて頼れるものをひとつでも増やしていくことで、未来に命を繋いでいくこと。
「あ、そうだったのか」
「ぼくたちはすこしも自分のもとにはいないで、つねに自分の向こう側に存在する。不安や欲望や希望がぼくたちを未来の方へと押しやり、ぼくたちから、現に(今この瞬間に)存在していることについての感覚や考慮を奪い去る」(モンテーニュ、『エセー』)
モンテーニュが指摘するこうした傾向は、現代においてより強まっていますが、ここには奇妙な逆説があるように思います。
つまり、未来のある到達点にいたりたいなら、本来足もとの大地を一歩一歩踏みしめていかなければそれはありえない。なのに私たちは道を歩まず、道を知らずに、どこでもドアでいきなり目的地へたどり着くことを期待している。
これではむしろ目的地から遠ざかってしまうことの方が、ほとんどでしょう。
間近にありすぎるもの(「今ここ」)は、かえって朦朧としてリアリティーを感じないものですが、しかし着実に来たるべき未来(目的地)へ至る道はそこにしかありません。
その意味で、「ゆっくり行く者が、遠くへ行く」というイタリアのことわざは、今週のいて座にとってよき指針となるはずです。
また、自分よりゆっくりとした地道な歩みを刻む人を見つけたら、ダンスパートナーを申し出てみるのもいいでしょう。
今週のキーワード
『未来予想図Ⅱ』