いて座
食べるという冒険
本能を呼び覚ませ
今週のいて座は、さながら野原で無心にバッタを追う子供のごとし。あるいは、人間の脳の奥深くに刻まれた、恐竜の恐怖を感じつつ虫を捕食し生き永らえてきた原始哺乳類の集合記憶がフラッシュバックしてくるような星周り。
例えば追われる恋よりも、追う恋。これは明らかに人間の中に残存する動物的側面の顕著な証しと言うことができるでしょう。獲物を見つけたら、自分で捕って、食べる。このシンプルな活動原理は太古から積み重ねてきた、もっとも普遍的な動物としての存在形式であり、そうやって捕食者としての本能を呼び覚ましていく行為は人に強い興奮と喜びを感じさせてくれます。
特に半人半獣のいて座にとって、それは定期的に催されるお祭りのようなものであって、忘れてはいけないごく自然な営みであり、自分の半身を生き直していく大切な時間でもあります。
もちろん、お祭りに参加するもしないも本人の自由ですが、人の心からの欲望すなわち愛と憎しみの根源を探っていくにあたって、捕食者として重ねてきた記憶はやはり避けては通れないものなのです。
今週は、自らの愛憎を、追う立場から見つめ直していくことで再確認していくことができるかも知れません。
幸福の見直し
「追われる恋と追う恋はどちらが幸福になれそうか?」という極めて人間臭い議論についても、人骨の調査から「狩猟採集民の方が原始農耕民より長命であった」という研究報告が聞かれるようになった昨今においては新しい視点から見直される必要があるのではないでしょうか。
すなわち捕食とは、単に食べるという行為にとどまらず、新たな興奮や感動を積極的に追って自ら実体験していくことで、既存の幸福定義を越境せんと試みる革新的なライフスタイルの一環であり、ある種の哲学なのです。
特に一見嫌悪を感じる食べ物であるほど、調理方法や食べ合わせなどこちらの創意工夫次第で、これまでとは違った世界観や人生観が得られ、生きるということを確実に多彩にしてくれます。
何より、そこには決まったメニューを定量的に食べ続ける者にはない、世界の広がりがあるんです。
どうか今週は、冒険としての捕食ということを頭においてみて下さい。
今週のキーワード
捕食の哲学