いて座
自画像の更新
新鮮さの理由
今週のいて座は、『学会の夜のホテルに泳ぎけり』(杉田菜穂)という句のごとし。あるいは、自分自身のなかに文脈的な新しさを再発見していくような星回り。
「学会」というどことなく堅苦しく息の詰まる雰囲気を連想させてから、夜にホテルのプールで泳いでいる情景が繰り出されることで、読者に強いカタルシスを感じさせてくれる一句。この場合「泳ぎ」が夏の季語ですが、あまりの類例にないような新鮮さがあります。
そこには武装のためのスーツ姿から、スポーティーな水着姿という身にまとっているものの大胆な転換の影響もあるのでしょう。
泳いでいるのは健康管理のための日課なのか、それともたまの外泊先で羽目を外しているのか、それとも日中の学会での鬱憤を解消しているのか。へたに主観的な心情がいっさい省かれているからこそ、手垢のついていないスタイリッシュさが特に際立っている訳です。
作者としてはあくまで生活の一場面だったのかも知れませんが、なんとなく現代をたくましく自由に生きる女性の姿がいきいきと描写された、見事な自画像になっているのではないでしょうか。
7月12日にいて座から数えて「未知」を意味する9番目のしし座に金星(平和と調和)が入っていく今週のあなたもまた、普段行かない場所へ行ってみたり、あまりやったことのない行動を取り入れることで新たな自分を発見する喜びを追求していくべし。
過去をドラマに変えていく
今のいて座は、総じてこれまでの自分の自叙伝に手を入れていくような時期にあたりますが、そろそろいったん一度落ち着いて、あるいは改めてゆっくり自分を振り返る時間を持ちたい頃合いなのではないでしょうか。
そこでは例えば、今自分が歩いてきたこの道はこの先どこへ通じてゆくのか、そしてどこには通じていないのか、といったことが頭をよぎるでしょう。
先の景色を少しでも知っておきたいと気持ちが逸るかも知れませんが、まずは来た道を丁寧にたどっていく中で、自分が人生の分かれ道でいかなる動機に基づいて選択を行ってきたのか、それを丁寧に確かめていくことの方がはるかに大切なように思います。
ドラマには終わりがありますが、人生には終わりがなく、それゆえ過去というものはドラマとなり得るもの。そこには掲句のように、自分でもあまり気付いていなかった自画像の新しさの種がそこかしこに眠っているかも知れません。
その意味で今週のいて座は、おぼろげな夢や記憶から、自分なりのドラマ=物語に必要な神話素を取り出し、力を蓄えていくくらいのつもりで過ごしてみるといいでしょう。
いて座の今週のキーワード
大事なことは三度くりかえされる