いて座
落ち着くための工夫を
睡眠の訓練
今週のいて座は、特異な睡眠スタイルを追求・実践したフラーのごとし。あるいは、生活のグランドデザインに創意工夫をほどこしていこうとするような星回り。
発明家のバックミンスター・フラーは、ジオデシック・ドームと呼ばれるドーム建築物を普及させたり、飛行船のような形の自動車ダイマクション・カーの原型を作ったり、地球に対して「宇宙船地球号」というコンセプトを提唱したことなどで知られますが、その一方で伝統的なライフスタイルについても異を唱え、自らを実験台にして研究していました。
1920年代に空前の大繁栄をとげたアメリカでは、電気や水道、下水道が通り、ラジオ放送やレコードが普及するなど生活が一変していき、そうした社会の潮流を踏まえてフラーは1930年代初頭の時点で、それまでの睡眠時間は現代的なライフスイタイルには長すぎるので、訓練によって減らすことができないか模索し始めたのです。
『バックミンスター・フラーの世界―21世紀エコロジー・デザインへの先駆―』によれば、彼は実験を通じ、疲れを感じたり眠くなったりするのは、体や頭脳を酷使しすぎた証拠であり、その時点で休憩をとって疲労から回復しなければならないという確信にいたります。
そして最終的には、6時間仕事をするたびに約30分仮眠する。あるいは、「集中力の崩壊」が起きたら6時間もたっていなくても寝る、というスタイルを確立します。それで彼はうまくいき、講義を10時間以上続けたり、つねにメモをとったり、模型を作ったり、本を読んだりと、70代まで働き続けたのです。
ただし、彼以外の同僚や学生の多くはうまくいかず、それもこれも彼が30秒もあれば眠りに落ちてしまう極めて寝つきの良い体質だったことが大きかったようです。
10月29日にいて座から数えて「流儀」を意味する6番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、流行りや“普通”のライフスタイルを当たり前のものとする代わりに、フラーのように自分の体質にあった睡眠ライフを模索してみるといいかも知れません。
マンダラ塗り絵の効用
かつて精神分析家のユングは精神を病んだ患者の治療に取り組んでいるうちに、かれらがマンダラによく似た図形を描くことに気付き、それを患者がみずからを治癒しようとして、ほとんど無意識に試みるときに出現する、心の統合と全体性の元型と見なしました。
つまり、マンダラは象徴という手段を通して、対極にある存在どうしの熾烈な葛藤を調和にみちびき、崩壊していた秩序を再統合していくことで、患者と世界との和解を促していくための有力な方途となりうるのだ、とユングは考えた訳です。
そうして、たとえ宗教的な伝統とどんなに離れていようとも、自発的にマンダラ的な図形を描いたり、自分の無意識に潜んでいるエネルギーにアクセスし、関わっていくことで深い癒しが得られる可能性を発見されたことで、ユング派の精神科医や心理学者が考案したのが「マンダラ塗り絵」であり、その後、宗教学者の正木晃の監修で日本でも出版され、ロングセラーになっています。
正木の話によると、当初、まず大学の授業で使ってみたら、授業内容に興味を持てず、集中力に欠けがちな学生ほど夢中になり、次第に他の授業にも興味を抱くようになってくれたのだとか。同様に、今週のいて座もまた、どうしたら自分本来の深い落ち着きを取り戻していけるか、ということに注力していきたいところです。
いて座の今週のキーワード
自分を癒していくことに手間と時間をかけていくこと