いて座
不快ゆえにオススメです
憎まれっ子を見つめる
今週のいて座は、『太陽はいつもまんまる秋暑し』(三橋敏雄)という句のごとし。あるいは、みんなが目を向けないヒトやコトにこそ、むしろ目を向けていこうとするような星回り。
白露を迎えても、まだしばらく残暑がつづくのは毎年のこと。文学的には、秋といえば月の季節ではありますが、現実にはそこにはまださんさんと光り輝く太陽がある。
月は見かけるたびに形や目にする方向が変わっていきますが、太陽はそのまぶしさゆえに直視することが月ほどないものの、いつも変わらず「まんまる」であり続けてくれていることには、小さな子でも気付いている。
うだるような暑さが伝わってくる掲句は、そうして季節がとうに変わっても「夏だ!」と主張しつづけているかのような太陽の存在感がよく捉えられています。
人間に置き換えてみると、気が利いていたり、なんとなく居心地のいい「月」に比べ、「太陽」は少々“うざったい”存在ではありますし、実際近くでギラつかれいると疲れてしまって、「なんだか面倒だ」と遠ざけられることの方が多いかも知れません。
しかし、面倒で、うざったくて、やり過ぎな「太陽」のような人も、本当にいなくなってしまっては困るのです。9月7日にいて座から数えて「カウンターパート」を意味する7番目のふたご座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな世間から疎まれがちであるにも関わらず、必要不可欠な存在や在り方を改めて再評価していくような機運が高まっていきやすいでしょう。
栄枯盛衰を見つめるために
シェイクスピアの『マクベス』の最初の場面では、雷鳴と稲妻のなか3人の魔女が現れて会話を交わし、その場面の最後「きれいは汚い、汚いはきれい」というあの有名なセリフを声を揃えて唱えるのですが、原文では“Fair is foul, and foul is fair.” でした。
フェアとファウル、適法と反則、正しいことと間違ったこと、という意味です。つまり、人間の世界と魔女の世界とでは、正しいとされていることや価値観が逆になる。あるいは、良い手段と良い結果、悪い手段と悪い結果が、そのまま対応することなく、ねじれていくようなイメージで、岩波文庫の木下順二訳では「輝く光は深い闇よ、深い闇は輝く光よ」という訳でした。
これは単なる言葉遊びではありません。人や物事の栄枯盛衰を長い視点で冷徹に見つめていくことで得られた叡智の言葉であり、先の「月」と「太陽」の対比にも通じていくのではないでしょうか。
当初は世間や周囲に間違っていると言われた意見や考え方ほど、時を経てやがて正しいことが証明されるもの。このことを、今週のいて座は改めて胸に刻んでいきたいところです。
いて座の今週のキーワード
「輝く光は深い闇よ、深い闇は輝く光よ」