いて座
多様性を耕す
「ふたつの皿」さまざま
今週のいて座は、『秋風や模様のちがふ皿二つ』(原石鼎)という句のごとし。あるいは、まず自分自身にこそ多様性を許していこうとするような星回り。
「父母のあたゝかきふところにさへ入ることをせぬ放浪の子は伯州米子に去つて仮の宿りをなす」という前書きをストレートに受け取れば、この句には医者の家系に生まれながらも文学を志した作者と両親との関係がうまくいかなかったがゆえの、皿もそろわないような貧しい暮らしが詠まれているのだと考えられます。
ただし、ある解説者によれば、この句の背景になっているのはむしろ人妻との駆け落ちの失敗であり、引き離されるときに分け合った二つの皿について詠んでいるのだと言います。
とはいえ、名句と呼ばれる作品は作者の個人的事情を離れて、読者それぞれに寄り添ってくれるもの。その意味で、掲句は人生のさまざまな場面において、さまざまな「ふたつの皿」を思い描かせてくれるはずであり、そうした偶然が引き合わせてくれる人生の妙こそが、秋風によってここで深められている訳です。
同様に、人間というものも深みを増せば増すほどに、見る者や関わる人によって、それぞれに異なる側面が引き出されるものであって、得てして誰に聞いても同じような評価が出てくる人よりも、およそ統合することが難しく感じられるほどに多面的な評価が出てくる方が魅力的な人が多いように思います。
24日に自分自身の星座であるいて座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、時と場合によって、てんでばらばらな自分を打ち出したり、演じたりしてみるくらいでちょうどいいでしょう。
どこかしらで無法者であること
俳人に限らず、芸術に関わってきた者たちの歴史を紐解けば、古来より「何を知り、何を為すべきか」という問いに対し親や社会が用意した“正しい”解答や間違いのない役割にハマっていく代わりに、余計なことばかり知りたがり、やりたがる者たちによって、「魂」の多様性は耕され、育まれてきました。
例えば日本神話においても、日本で最初に和歌を詠んだとされる芸術神スサノオは、神話においてしばしば無法者や乱暴者とされ、規定された定位置から追放され、辺境をフラフラとさまようことで、やっとその本来の創造性を開花させ、その種を撒いたのです。
また、他の世界各地の神話を見ても、多くの場合、魂は自然に翼を生やして飛び立つことができるものとされ、当初定められた日常世界から漂い、ズレ続けていくことで霊的気息を整えていったのです。
今週のいて座もまた、「~すべき」といった意識の呪縛をできる限りほどいて、精神に幾らかの「逸脱」をゆるしていくこともまた心がけてみて下さい。
いて座の今週のキーワード
スサノオ