いて座
縁が人をつくる
酒席の袋回し
今週のいて座は、『我等パンツならべ干すなり冬銀河』(小川軽舟)という句のごとし。あるいは、誰かに引き出されたものに後押しされていくような星回り。
新人同士の酒席の袋回しでできた一句。これは俳人たちが集まって袋(封筒)に「酒」とか「雨」といったように一人一題ずつ季語を書いた紙をいれて回し、そこから順に紙を取り出し、そこに書かれた季語で自由に句をつくっていくという遊び。
作者が取り出した紙には「パンツ」と書いてあったのだそう。酒の勢いを借り、その場の奇妙な連帯感を「我等パンツ並べて干すなり」と一気に書き上げたところで、思わず空を仰いだのでしょう。
そこには冬の夜空に冴え光る天の川があった。秋のそれとは違って、ひときわ強烈な存在感を放つ光の帯に、願をかけるつもりで自分たちの行く末を重ねたのかも知れません。
句自体もそれが作られた過程も、どこか若い。けれど、俳句が座の文学であることを身に沁みこませてくれるのは、上手に整えられすぎた場よりも、案外こうした荒削りで勢いのある場であったりするのではないでしょうか。
12月8日にいて座から数えて「対等な交わり」を意味する7番目のふたご座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、気楽に遊べる仲間との交わりのなかで未来を見出していくことができるはず。
蝋燭の画家
高島野十郎という、生涯にわたって蝋燭の絵を描き続けた画家がいます。一度、個展を見に行った際、数十枚もの小品の蝋燭の絵がずらりと並んでいる光景はなんとも異様でした。
蝋燭の火は確かに明るい色彩で描かれているのですが、その焔の下部には必ず深い瑠璃色が使われており、それはちらつく焔に呼応するように広がった闇の色そのものでした。
高島はこうした蝋燭の絵を、展覧会などに出展する作品としてではなく、いわんや売るためでもなく、身近な者への贈呈品として描き続けたのだと言います。まるで献灯の儀式のような宗教的な行為ですが、高島はきわめて小さな画面のなかに、永遠に果てることのない光を刻み込み、自身の思いをそこに凝集させました。その意味で、蝋燭の絵は高島と贈られた者との濃密な関係性を媒介する<縁>そのものであると同時に、彼の代表作ともなっていったのです。
同様に、今週のいて座もまた、誰かとの縁や繋がりを通して、みずからの生きがいを再認識していくことができるかも知れません。
いて座の今週のキーワード
合縁奇縁