いて座
偶然性の海でサーフィン
ここではないどこかへ連れ去られるために
今週のいて座は、千葉雅也の「非意味的切断」のごとし。あるいは、偶然性の波の上にのって見知らぬ自分へと変容していこうとするような星回り。
高度に情報化された現代社会では、“賢く有能な”人ほど情報の取捨選択にコストをかけ、どこかの時点で意図的に情報収集をやめて行動に移ろうとしていくが、端的にいってそういう意味の過剰さや「意識の高さ」にくたびれてしまった人も多いのではないだろうか。
そうした主体の理知のもとでの行動の中絶を、哲学者の千葉雅也は『勉強の哲学―来るべきバカのために』の中で、「意味的切断」と呼んでいるが、他方で「非意味的切断」ということについて次のように述べている。
すぐれて非意味的切断と呼ばれるべきは、「真に知と呼ぶに値する」訣別ではなく、むしろ中毒や愚かさ、失認や疲労、そして障害といった「有限性finitude」のために、あちこちに乱走している切断である。
そして興味深いことに、千葉やこのタイプの切断の重要性を指摘した上で、それを「そうでなかった自分に成る」ためのテクニックとして肯定的に活用しようと畳みかける。
私たちは、偶然的な情報の有限化を、意志的な選択(の硬直化)と管理社会の双方から私たちを逃走させてくれる原理として「善用」するしかない。
8月8日にいて座から数えて「逃走原理」を意味する9番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、「自分が求めていたものを得る」のではなく、むしろ見知らぬ自分になっていくための行為として勉強に励んでいくべし。
非意識的な連帯
何かが軋む音や、鼻をつく匂い、いつもとは異なる感触、窓の外でゆれる漆黒の葉陰……。
不意にそうした体験が差し込まれた時、記憶の底に埋もれていた感覚や感情まで想い出され、意識がどこかへ連れ去られてしまうといったことがあります。あれは私自身の記憶、こっちはネットで知った情報、これは知り合いから聞いた体験談。そんな風に普段は頭の中で整理されていた情報が、さながら嵐の海のようにかき混ぜられ、人称による区別が消えていく。
偶然性の深淵から発する非意味的切断の波に乗っていくというのも、そうした人間が独立した個人である以前にゆるやかに結びいたネットワークのなかに、ふたたび自己を開いていくという滑走的な営みに他らないのかも知れません。
今週のいて座は、そうした非意識的な連帯にあなた自身も身を委ねていくようなところが出てきやすいでしょう。
いて座の今週のキーワード
非意味的切断の善用