いて座
二元論を超えて
裏と表を同時に見る
今週のいて座は、「天の川敵陣下に見ゆる哉(かな)」(正岡子規)という句のごとし。あるいは、実際には見えるはずがないものをあえて見ていこうとするような星回り。
1894年(明治27年)夏に日清戦争が勃発した年に詠まれた句。翌年、作者は従軍記者として大陸に渡ったものの、上陸二日後に講和が結ばれ、そのまま帰国の途につきました。
当時、俳句における「客観写生」の理念について新聞で発表していた作者ですが、その傍らでこうした想像に基づいた句も詠んでいたのです。広大な大地をまたぐ、さらに壮大な天の川。そして、その下に長蛇をなして陣取る敵軍。
尋常ではない緊迫感で身がすくんでしまってもおかしくないはずなのに、その今まで感じたことのないスケール感に思わず身を抜け出して、当時はまだなかったはずの飛行機に乗った鳥瞰へとまなざしが開かれていったのでしょう。
おそらく作者は戦況を脳裡に描いた時に、暗い死の気配だけでなく、抑えきれないときめきもどこかで感じていたのかも知れません。
そして皮肉なことに、作者は戦地からの帰国の途上、船中にて喀血して重態に陥り、そのまま療養生活に入り、7年間の闘病生活のあいだに旺盛な創作活動を行った末、34歳の若さで亡くなりました。
7月28日にいて座から数えて「複眼思考」を意味する3番目のみずがめ座に逆行中の木星が戻っていく今週のあなたもまた、自身の将来しかり国の行く末しかり、小さな日常や固定観念を飛び越えてまなざしを大きく広げていくことがテーマとなっていくでしょう。
表裏一体としてのゼウスとヘラ
ギリシャ神話の主神(神々の王)であり天候を司る神ゼウスは、今日ではその業績よりも、どちらかというとその見境いのない浮気癖の方で有名かも知れません。
大恋愛のすえに結婚したにも関わらず、結婚直後から浮気に走り、その後も相手が神であろうが人間であろうが、女だろうが少年だろうが、手を変え品を変え、動物や相手の旦那の姿に変身してでも浮気し続け、その度に妻を怒らせ、嫉妬させ、傷つけあい、騙しあったゼウスは現代の道徳観からすれば間違いなく非難の的になるはずです。
しかし二人はそれでも別れることなくそうした関係を続けました。その気になればさっさと別れて心安らげる関係を求めればいいものを、なぜそうしなかったのでしょうか。
それはおそらく、ゼウスが創意工夫の権化であり、変幻自在に姿かたちを変え、絶えず自分の理想を追い求め、世俗のルールやしがらみをもろともせずに、自由に振る舞い続けるその姿が、強烈な想像力のシンボルであり、家庭と家族の神として、世俗の束縛やお堅い社会構造のシンボルであった女神ヘラと表裏一体の関係にあったからではないでしょうか。
そして今のいて座もまた、大きな視点で見れば、まさにヘラからゼウスの側面へとひっくり返って、どこかで型にはまってきた自分を崩していこうとしているのだと言えます。
いて座の今週のキーワード
人生に不可欠な要素としてのゼウスの不良