いて座
こちら愛、応答せよ!
「TC」という新たな取り組み
今週のいて座は、『プリズン・サークル』という映画のごとし。あるいは、「能動的な主体」というモデルを超えたところで為すべきことを為していこうとするような星回り。
これは従来のいわゆる厳罰主義とは違う新しいアプローチが導入されている日本の刑務所を取材して撮られたドキュメンタリー映画で、そこでは受刑者同士の対話をベースに犯罪の「原因」を探りながらその更生を目指す「TC(Therapeutic Comunity=回復共同体)」というプログラムが導入され、受刑者たちは自分たちが犯罪を起こすに至ったさまざまな経緯や背景を共有していきます。
それは、いわば運命に巻き込まれて行為させられた“被害者”としての自分を見つめるプロセスなのですが、ところがそうであるにも関わらず、最終的にはみずからの意思に基づいて起こした犯罪の“加害者”としての自分を見つめることに繋がっていくのです。
そこでは、人は加害者であるが被害者であり、被害者であるが加害者であるという、近代的な考え方においては両立しえない正反対の命題が両方とも肯定されていきます。
特に、自分を何か運命としか言いようがないものの“被害者”と捉えるということは、その人を免責することに他ならず、普通は「責任逃れ」と非難されてしまう訳ですが、自分がやってしまった問題行動をひとつの現象として客観的に研究していくと、不思議なことに、次第に本人は自分の行動の責任を引き受けられるようになっていくのです。
映画ではそうした受刑者の様子が実に克明に描かれていくのですが、こうしたアプローチは今のいて座にとって非常に大きな示唆を与えてくれるように思います。
29日にいて座から数えて「応答」を意味する11番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が報いるべき事態に心から向きあっていくべし。
応答としての責任
別の見方をすれば、先の刑務所での「TC(回復共同体)」の話は、私たちがいかにごく普通の日常において、ひとり何気なく過ごしているだけでは応答するべき事態に「応答」することが困難かということを示しているのだと言えます。
例えば過去に犯した問題行動であれ、望ましい未来のための取り組みであれ、自分の行動に責任を持つために、私たちは「自分で意志で」それをやるのでなければならないと考えがちですが、ここで問題なのは、意志を意志することはできないということ。
そのため、私たちはついつい仕方なく、無理やり押しつけられた“貧乏クジ”を受け入れること=損をすることが責任を負うことなのだと思い込んでしまっているように思います。つまり、根本にある考え方を変えなければダメなのです。
そもそも、責任は英語で「responsibility」であり、「応答(response)」に由来するように、それは心からその必然性に感じることができたとき、さながら赤ん坊が言葉を覚えるように、自然と発生してくるものなのではないでしょうか。
そしてそうした応答の自然的発生を促すためには、TCのほか当事者研究でも実践されている「外在化」という、みずからの言動や来歴をいったん単なる現象として捉えること、すなわちある種の「運命感覚」を働かせることが重要な鍵となってくる。
その意味で今週のいて座もまた、みずからを取り巻く二律背反的な事態(運命)に気付いていけるかどうかが一つの課題となっていくでしょう。
今週のキーワード
責任の自然発生