いて座
聖なる光景をひらく
※2021年1月4日~1月10日の占いは休載とさせていただきます。(2021年1月3日 追記)
一幅の宗教画
今週のいて座は、「山川にひとり髪洗ふ神ぞ知る」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、心の秘めた部分が開かれていくような星回り。
現実には冬の山中でひとり髪を洗う女性などあり得ない話ですが、ここはあえて実景としてではなく、作者の内面世界を詠んだものとして受け止めたいもの。
「神ぞ知る」という結びの言葉は、誰も見ていないという意味を含んでいる一方で、神だけはそれを知っているという意味でもあり、うがった見方かも知れないませんが、これは作者が心に秘めている理想の女性像であり、みずからを補ってくれる存在なのではないでしょうか。
そう考えてみると、どこか鄙びた野性味のある女性が、ひとり髪を洗っている構図を通して句になることで、洗練された一幅の宗教画のような気品が出てくるのも、さもありなんという感じがしてきます。
ここには作者が求めた理想の結びつきの姿があり、それは作者が想定していた読者との理想的な関係にも投影されていたはず。
30日にいて座から「補償」を意味する8番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分という存在を根本から補ってくれるものの像を明確にしていくことがテーマとなっていきそうです。
<世界>の侵入
長く生きていると、時おり主に天災や危機を通して、普段じぶんが属していると思っている社会の外側から、世界が侵入してきてはこれまでの秩序を乱したりひっくり返したりしてしまうことがありますが、そうした畏るべき力のことをかつてはどの民族も「聖なるもの」と呼んだものでした。
例えば、マレー半島の先住民は聖なるもののなだれ込みを促すものとして近親婚をタブー視するだけでなく、同様の意味で、猿に不用意に笑いかけたり、人間を相手にするように話しかけることを禁じましたし、他にもある種の虫や鳥の声をまねることや、鏡に映った自分を見つめすぎたり笑いかけたりすることもタブーと見なしていました(レヴィ=ストロース『親族の基本構造』)。
それらには、人間と自然とを隔てることで人間世界を成り立たせている壁を、溶解させるだけの魔力が潜んでおり、自然界の過剰な力をはらむ「呪われた部分」に他ならなかった訳です。
ただ、今のいて座にとっては、そうしたひたひたと人間世界に近づいては翻弄してくるマージナルな存在や領域は、忌み嫌い避けるべきものではなく、むしろ宇宙的な力を内部に取り込むためにぜひとも接近し触れていくべきものなのだと言えるかも知れません。
今週のキーワード
攪乱されたいという願望