いて座
力強い私をこしらえる
芯をとらえる
今週のいて座は、「大木を伐るこしらへや霧の中」(西山泊雲)という句のごとし。あるいは、解き放つだけの力をしかと蓄えていくような星回り。
一読して、霧が冷たく流れる深山の静かな情景が浮かんでくる一句。晴れていれば、そこには山々を包む紅葉や、連山の峰々が見えていたのかも知れませんが、ここでは霧が深く立ち込めて一切の景を空白の中に隠してしまっています。
そこに立ち現れるのは、墨絵に描かれた一本の垂線のごとき大木のみであり、作者はその恐ろしいほどの存在感に逃げずに真っ向から立ち向かうつもりで対峙しているのでしょう。
おそらく普通なら「用意」とか「準備」とか言うところを、あえて「こしらへ」と表したあたりに、樵夫(きこり)が古武士のような風格をたたえている姿もまた感じられてくるのではないでしょうか。
大木を伐り倒すには、まずその存在の芯の部分をしかと受け止め、自分の芯と結びつけて捉えていくのでなければなりませんが、掲句からはそうした力強い呼吸が自然と伝わってくるかのようです。
11月1日にいて座から数えて「身体的健康」を意味する6番目のおうし座にある天王星の真向かいに太陽が位置し、否が応でもそこへ意識が向いていく今週のあなたもまた、いつも以上に自身の身体や生活習慣の乱れをただしていくことに集中していくといいでしょう。
ノイズをカットするために
どこかで「万有引力とはひき合う孤独の力である」と谷川俊太郎さんは書いていましたが、掲句における大木と樵夫の関係はまさにその好例と言えるでしょう。
でも、互いに自然とひき合っていることを認めるのは実際にはとても難しいことです。それは街やネットに溢れている広告だとか、「ランチの時間だから食べなきゃ」と脳内に植えこまれた自動プログラムとか、いろんな電気信号(ノイズ)を受信しまくりながら日々慌ただしく生きていると、いつの間にか足元がお留守になって、どこに立っているのか忘れてしまうから。
あなたはどこに立っているんでしょう?そしてあなたの芯はどこにあるのか?それを感じながら足元を支えるためには、どれくらいの力を蓄えていく必要があるのでしょうか。おそらく、それを知るために人は独りきりで歩く時間を確保していかなければならないのだと思います。
自分ひとりで歩くなら、どこを歩こうか。今週はそんなことを、朝、窓を開けながら考えてみるといいかも知れません。
今週のキーワード
歩こう歩こうわたしは元気