いて座
不意にこみ上げてくるもの
怪異としての感情問題
今週のいて座は、小豆とぎの出す「ジャリジャリ」という音のごとし。あるいは、自分の中にある無意識のうちの恐れが実体化してくるかのような星回り。
夜、川や谷で、あずきを洗うような音がすることがあったら、それは小豆とぎという妖怪がその正体かもしれません。
名称の違いはあれど、北は東北から南は九州まで、小豆とぎの伝承は日本各地に広く伝わってきたもので、本来は「音」の妖怪であった小豆とぎを、水木しげるさんは異様なまでのリアリティをもって絵にして見せてくれたのです。
しかし、なぜ音が妖怪になりえたのか。近年の研究によると、稗・粟・とうもろこしといった主食とともに小豆も日常的に食べていた山の民に対し、正月などの「ハレ」の日(特別な節目のタイミング)に出す特別な食べ物としてしていた平地の民は、その生活習慣の違いゆえに恐れや不安を抱いており、それが音をひとつの怪異として聴き取らせたのだと考えられているそう。
姿ははっきり見えずとも、何かが「いる」ということを私たちはまず身体で感じ、その反応を介して自身の感情と向き合っていく。その意味で、妖怪・小豆とぎは水木しげるさんの描き出した架空のキャラクターなどではなく、何より私たちの無意識の底に棲みついてきた不安の元型であり、決していなくなることはないのです。
21日にいて座から数えて「未解決の感情問題」を意味する8番目のかに座で先月に続き2度目の新月を迎えていく今週のあなたもまた、自身でもまだその実態がつかめていない感情や心理的なしがらみと改めて向き合っていくことになるでしょう。
不穏な気配
例えば、あなたが最後に心から笑ったのはいつでしょうか?もしそれがすぐにパッと思い出せないくらい前のことならば、ここ最近、あなたは真面目に生活しすぎていたのかもしれません。
いて座の人たちというのは、どこかでたらめなことを考えては、おかしな振る舞いをしていると周りの人の笑いを誘っているような時が案外いちばん生き生きしているものです。
なぜそういう時に生き生きしてしまうのか。野暮を承知で言わせてもらえば、それは普段みんなが言いたくても言えないこと、現わそうとしても現わせないことが、自分と世界とのあいだの「余白」から突如として飛び出してくるからなのだと思います。
そういうものの1つが妖怪であり、小豆とぎなのです。けれど、だいたい気にしているのは本人だけで、他の人は気にしていなかったり、そもそも見えても聞こえてもいなかったり。でも、こちらでだまってジッと見ていると、不意にこみあげてくるものがある。
物であれ人であれ、そういう不穏な気配のするところに今週あなたは惹きつけられていくはずです。
今週のキーワード
余白からこんにちは