いて座
変わるものと変わらないもの
何かを知るとは思い出すということ
今週のいて座は、「若楓おほぞら死者にひらきけり」(奥坂まや)という句のごとし。あるいは、自身の背景に広がっているものをそっと振り返っていくような星回り。
おそらく、身近な人が亡くなったのだろう。胸中にさまざまな思いを抱えつつも、それらをグッとこらえて見上げると、五月の空が広がっていた。
楓(かえで)というと秋の紅葉のイメージがどうしても先行するが、初夏の風に揺らぐ薄緑の若葉(「若楓(わかかえで)」」も思わずハッとするほどの目覚ましさを感じさせる。掲句においても、その新鮮な緑に触発されて、塞いでいた胸が青空とともにひらけたのだ。
いつもと同じ空であるはずなのに、これまで決して見ることのできなかった鮮やかな景色として目に映ったのに違いない。
それは他ならぬ死者と視線が合ったように感じられたからなのか、死者がいなくなったことで世界が変容してしまったからなのか。
7日にいて座から数えて「理屈を超えた直感」を意味する12番目のさそり座で、満月が起きていく今週のあなたもまた、無理に前向きになって頑張ろうとするのではなく、ただ自分が生きてこの世にあることを無心に感じていきたいところだ。
何も失われてはいない
たとえ取り組む仕事や、関わる世界、付き合う人間、あるいは記憶そのものが変わってしまったとしても、あなたが生きてこの世にある限り、これまでの痕跡は記憶の中で常に書き換わりつつも残り続けるだろう。
神林長平のSF小説『アンブロークン 戦闘妖精・雪風』の冒頭に、
「すべては変わりゆく/だが恐れるな、友よ/何も失われていない」
という言葉が掲げられていますが、これは今のあなたにおあつらえ向きのメッセージと言える知れない。
さながら一つの厳粛な儀式のごとく、さよならを言う相手は誰か、こんにちはと声をかけていくのはどこか、今週はよくよく見定めていくといいだろう。
今週のキーワード
生者にハロー、死者にはサヨナラ