いて座
花は矛盾に咲く
勝負事の奥義
今週のいて座は、「秘すれば花」という世阿弥の言葉のごとし。あるいは、みずからの中にもう一つの可能性を仕込んでいくような星回り。
どんな剣の達人でも、思いもよらない技に負けることがあるが、そういう技はいったん使ってしまえば秘密でも何でもなくなってしまう。だから、むしろ決して使うことを控えつつ、いざという時のために隠しておく技を持っておくこと自体が肝要なのだ。「秘すれば花」という言葉の意味を、分かりやすく言い換えればそんなところだろう。
「さるほどにわが家の秘事とて、人に知らせぬをもて、生涯の主になる花とす。秘すれば花、秘せねば花なるべからず」(『風姿花伝』)
現代はひとつの職業にのみ生きる時代では既になく、「ダブルメジャー」の時代などとも言うが、一方でなにごとも露出し、アピールし、自己プロデュースするのが当たり前になりすぎて、まだ中途半端な花さえも簡単に披露してしまう人が多いようにも感じる。
世阿弥の先の言葉は、なにも女性の美しさをたたえる時のものではなく、もともとはもっと切実な勝負事における奥義だったはず。
5月1日にいて座から数えて「使える能力」を意味する6番目のおうし座で、水星(呼吸)が天王星(冴えと先鋭化)と重なっていく今週のあなたもまた、自分にとって「秘すべき花」となるようなもう一つの技能やスキルを黙って磨いていきたい。
向学心を燃やすには
「秘すれば花」は定型を破るということでもありますが、それは何も言葉の表現だけの話に限らない。例えば何かを「学ぶ」意欲とその効果に関しては、月並みな人生コースを外れたところでこそ、強く鋭く差し迫ってくるものが引き出されてくるということは、次のような句を読むとよく分かるはず。
「音もなく星の燃えゐる夜学かな」(橋本鶏二)
何をするにもシラけてしまって、特に必死に頑張ることそのものを恥ずかしく感じ、否定したくなる今の社会の風潮において、驚くべき向学心が発揮される場所を探せばおのずと夜間高校が浮かんでくるのかも知れない。
彼らは「まあいいか」という安易な流れに“あえて”逆らって、自身に矛盾を抱え込んでいる訳だが、向学心も癒しも、本来こうした矛盾がないところには決して湧いてはこない。
今週は、マンネリ化した状況から一歩抜け出し、こころ躍らせてくれる存在条件を求めていく上でも、絶好のタイミングと言えるだろう。
今週のキーワード
原風景としての夜間高校