いて座
スイッチを入れてくれる存在
一茶にとっての父親
今週のいて座は、「父ありて明ぼの見たし青田原」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、何らかの逆境や不利な条件をプラスに変えていこうとするような星回り。
小林一茶が掲句を詠み込んだ『父の終焉日記』は、父の死に瀕した作者のこころの動きや葛藤といった内面を克明に描いてみせたという点で、明治以降の私小説文学と『土佐日記』などの中世の日記文学を架橋する記念碑的作品。
何と言ってもその“新しさ”を特徴づけているのは「家」の崩壊を描いている点です。
継母とその息子(一茶の異母弟)との遺産分配を端に発する確執の激しさは有名な話ですが、掲句は父の死後、初七日を終えた一茶が、まさにそうした問題に対して覚悟を決めた際の一句であったのかもしれません。
父が耕してきた田んぼの稲が青々と夜明けの風にそよいでいる。
それを父とともに眺めたかったと感慨に浸る一方で、父の遺言を相手方は認めないであろうこと、けれど諦めて帰京すれば父の遺志に反してしまうことなど、あれこれを考え思い煩う自分に、とにかく本家の指図に委ねようと繰り返し言い聞かせていたはず。
そしてそれだけに、目は冴えに冴え、夜明けの青田がさらに鮮明に見えたのでしょう。
23日(金)にいて座から数えて「向き合うべき問題」や「取り組むべき人間関係」を意味する7番目のふたご座で下弦の月を迎えていく今週は、あなたもまた先のような一茶のまなざしにきっと目を開かせられるところがあるはずです。
限界と解放
どれだけ自分ひとりで努力を重ねたとしても、それが望んだ結果につながるかどうかは分かりませんし、最後は運を天に任せるしかない。
では何のために努力するのかというと、それは自分の限界を知るため。
限界を知ることで人は自らのDNAにスイッチを入れることができ、同時に、人生の重荷から解き放たれるような安堵感を覚えることもあります。
自分ひとりで頑張れることなんてたかが知れていますが、それは逆に言えば、何か大きなことを成し遂げようと思ったら、周囲や大切な人との交わりによって「運に運ばれる」ことが大切なのだということです。
ある意味で、今週のいて座のテーマは、自分を運んでくれるような相手は誰なのか、ということを再認識していく時と言えるのかもしれません。
今週のキーワード
『父の終焉日記』