いて座
闇の色は何色か
高島野十郎の『蝋燭』
今週のいて座は、「蝋燭の焔の瑠璃や夏の暮れ」(山西雅子)という句というのごとし。あるいは、闇の中に、見えないはずのものを見ていくような星回り。
かつて高島野十郎という、少し変わった画家がいた。彼は主に親しい人への贈呈用に生涯にわたって蝋燭の焔を描き続けた人で、彼が描く焔の下部には必ず瑠璃色が使われているのが常でした。
掲句は、そんな高島野十郎の絵をどこか思わせるところがあり、焔と言われて普通は赤やオレンジや黄色を連想するであろうところに、やや紫みを帯びた青の瑠璃色を持ってきている。
これは、野十郎もそうであったように、言葉上の連想ではなく、確かな観察から出てきたものなのでしょう。
実際、火を包んでいる闇にも色はあり、それはちょうど焔の内と外で呼応しあうような感じとも言えるかもしれません。
物事が盛んに勢い込んでいく夏の時代にも、その背後に「影」はあり、今週のいて座においては、むしろそうした自身の「影」ということの方が主題となってくるように思います。
沈殿物を浮かばせる
まず目を閉じて、今の自分の日常をぐるりと見回してみてください。そこにあるのは喜びや楽しさや、満ち足りた気持ちだけでしょうか?
嬉しかったことや楽しかった記憶が浮かんできた後、しばらく無心で心の底を覗いていれば、そこには必ず不安や焦り、嫌悪、反発、怒りなど、様々な不純物が次から次に浮かんでくるはず。
思想家の井筒俊彦は人間の意識世界について触れる中で、
「底の知れない沼のように、人間の意識は不気味なものだ。それは奇怪なものたちの棲息する世界。その深みに、一体、どんなものがひそみ隠れているのか。」(『意識と本質』)
と書きましたが、まさに今週のあなたはそうした自分の心中に潜む「不気味なもの」や「奇怪なものたち」に目を凝らし、しかと見届けていくことを大切にしていきたいところです。
今週のキーワード
地球は瑠璃色