いて座
包みこむほどのユーモアを
完璧に立派な人間などいない
今週のいて座は、『高慢と偏見』を書いたジェイン・オースティンのごとし。あるいは、人間の愚かさにニヤリと微笑んでいくような星回り。
18世紀のイギリスを舞台に、結婚適齢期の女性たちとたまたま引っ越してきた富豪の跡取り息子との間で、いかにもなドラマが展開されていくこの小説は、サマセット・モームが世界の十大小説に選んでいたり、夏目漱石も大絶賛していたりと、いわゆる「古典」と呼ばれる類の文学作品。
ですが、実際に読んでみると意外や意外、今どき月9でも放送しないようなベタなラブコメディと言った方がそのイメージに近いでしょう。
出てくるのは、どいつもこいつもツッコミどころを持った欠陥人間ばかりで、妙なプライドを振りかざしたり、思い込みで人を誤解しまくったりと、笑えるくらい恥ずかしい存在ばかり。
例えば、愛想のないボンボン青年ダーシーと、美貌は持ち合わせていないものの頭の回るエリザベスとが会話するこんなシーンがあります。
「初対面の人と気軽に話せる人がいますが、ぼくはそういう能力に欠けているんです」とダーシーが言った。
「みなさんみたいにうまく調子を合わせられないし、相手の話に関心がありそうな顔ができないんです。」
「あら、それなら私の指と同じですわ。」とエリザベスは言った。「はじめてのピアノで上手にお弾きになる方がいますけど、私の指は、はじめてのピアノだとうまく動いてくれません。力も速さもいつもの調子が出ないし、表現力もいつもみたいにいきません。でもそれは、自分が悪いのだと思っています。私も面倒なことが嫌いで、練習をしないからです」
この切り返しに、思わず苦笑いを浮かべるか、ニヤついてしまうかは人によって分かれるところですが、どれだけでもこの小説が大変なお話か、多少は察することができるはず。
3日(月)にいて座から数えて「他者との駆け引き」を意味する7番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、どうしたって完璧ではいられない人間の「立派じゃなさ」やバカさ加減を受け入れ、「そういうもんだよな」と笑いながら見つめていきたいものです。
人生を受け入れるために
ちなみに主人公のエリザベスは、ダーシーとの初対面で「見た目が美しくない」と一蹴される訳ですが、女にとってこれ以上の屈辱はないでしょう。同様に、ボンボンのダーシーも一世一代の告白をしてみたものの、見事に振られてしまいます。
ただ面白いのは、そんな2人が最終的には結ばれて、結婚してしまうんですよね。それこそ作者のオースティンが彼ら登場人物を「わあ、こいつまた間違えてる!」と等しく「恥ずかしい人」として笑いつつも、根本のところで愛をもってまなざしていることがよく伝わってくるでしょう。
こういう芸当、実際に自然とやろうとしてみても、土壇場になると案外できないことなのではないでしょうか。
その意味で、エリザベスの父がラストに吐く次の言葉は、今のあなたにも打ってつけであるように思います。
「われわれは何のために生きているのかね? 隣人に笑われたり、逆に彼らを笑ったり、それが人生じゃないのかね?」
今週のキーワード
笑って許す