いて座
青の時代ふたたび
大人になっても「青」を取り戻せるか
今週のいて座は、ノヴァーリスの『青い花』という小説のごとし。あるいは、自己誘導のプロセスとしての「彷徨い」を経験していくような星回り。
「此方」にあるものに満足できなくなって、「彼方」にあるものを探し求め、彷徨い出てていく時、人は初めて精神的に自立していくことができるのかもしれません。
小説『青い花』の主人公、ハンリッヒ・フォン・オフターディンゲン(長い!)も青い花を探していく訳ですが、ではその「青い花」とは何なのかということは、ほんのちょっとしか触れられていない。
けれど、そのちょっと出てくるだけの青い花を主人公が求めているという意識が、読んでいる間ずっと頭のどこかに引っかかっていく。まるで見果てぬ夢を見続けているかのように。
この際、『青い花』がどういったあらすじなのかはどうでもいい。それよりも、青という色が人の目に見える光のスペクトルと目に見えない有害なスペクトルの境目あたりにある色で、ずっと彼方にある世界の果てに人が見出す色でもあるということが大切なのです。
なぜなら、「青という色」すなわち青春を、初恋を、そして失恋を経験したことのない人、あるいはなかったことにしてしまう人が現代社会にはとても多いからです。
20日(水)におとめ座で満月を迎えていく今週は、今の自分に欠けているもの、失ってしまったものとは何かということが改めて明らかにされていくでしょう。
クリス・マッカンドレスの場合
『イントゥ・ザ・ワイルド』というアメリカ映画をご存知でしょうか?
裕福な家庭で何不自由なく育ち、エリートとして将来を半ば約束されていた青年クリス・マッカンドレスが、大学卒業と同時に、親に与えられた車だけでなく、お金や身分や名前さえも捨てて北(アラスカ)へと旅立っていったという実話をもとにしたお話です。
彼は最後アラスカの厳しい自然のなかで衰弱死してしまうのですが、幸いなことに、彼が最後の日々において何を感じ何を考えていたのかということの一部は、残された日記を通してうかがい知ることができます。
「人生において必要なのは、実際の強さより、強いと感じる心だ。
一度は自分を試すこと
一度は太古の人間のような環境に身を置くこと
自分の頭と手しか頼れない
過酷な状況に一人で立ち向かうこと」
彼にとって、おそらく失ってしまったものとは自分自身の「頭と手」であり、文明の及ばないアラスカの大地に「青という色」を見出したのでしょう。今週はそんな彼の「心」を、どうか近くに感じてみてください。
今週のキーワード
本来あるべき原動力としての青春